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No.32 東京の会社を辞めずに地方でも継続できるリモートワークという新しい働き方

皆さんは「リモートワーク」という働き方をご存じでしょうか。「リモートワーク」とは、会社に出社せず自宅やコワーキングスペースなど自由な場所で仕事をする働き方のことを意味します。今回お話しを伺う佐藤由久さんは、東京の会社に所属しながら鶴岡へ移住し、リモートワーカーとして生活されています。一般的に仕事は移住の壁となることが多いのですが、その壁を「リモートワーク」の形で解決した由久さんのお話を伺いました。

(写真1:インタビュー時)

【紹介】佐藤由久さん

鶴岡出身の34歳。高校卒業後、岩手県にある大学へ進学。大学院を経て東京にある日本アイ・ビー・エム株式会社へ就職。約6年間システム開発の仕事に携わり、その後場所にとらわれずに働けるクラウド技術を扱う株式会社アピリオへ転職。現在は、お客様からの相談を受けて設計、開発・テスト、そして導入後の運用などのシステム開発全般の業務をこなす、ITコンサルタントとして活躍中。

(写真2:アピリオ東京オフィスからの眺め)

由久さん:私の勤務する株式会社アピリオは、クラウドシステムを取扱い、自社システムのほとんどがクラウド上にある、まさに「クラウドの会社」です。日本アイビーエム(株)から転職した時は、自分のスキルを向上させたいという気持ちが強くありましたし、クラウド技術があればこれまでの経験を活かした仕事が場所を問わず行えると考えていました。そして今だからこそ言えることなのかもしれませんが「自身のスキルアップ」と「移住後の仕事像」の二つが近づいていったことが転職に向けた下地づくりになっていったのだと感じています。

マイプロ部参加し帰省を決意

就職の選択肢からリモートワークを選んだ理由

2017年10月に鶴岡へ移住した由久さんですが、この1年前に出会った鶴岡市の移住交流プログラム(通称マイプロ部)が移住を決意させた直接のきっかけだったといいます。いつか移住したいと考えていた所に偶然マイプロ部の記事をインターネットで目にされたそうです。

(写真3 マイプロ部の様子)

由久さん:当時のマイプロ部は鶴岡だけでなく酒田も見ることができる内容で、庄内を広く見た時、新しいことやろうとしている人達も多くいることを感じました。さらに、地元には自らのスキルを活かせそうなIT企業があることも分かりました。マイプロ部で出会った人達とのつながり、改めて気づいた鶴岡の魅力に触れ「こんな地元なら帰りたい」と思えました。

当初は地元の企業への就職を考えていたそうですが、そこからリモートワークに切り替えた理由は何だったのでしょうか。

(写真4:山形市内のコワーキングスペースでの勉強会で発表する様子)

由久さん:就職を検討していた地元の企業からは、『場所が変わってもエンジニアの価値が変わるわけじゃないのだから、できるだけ今の給料を維持できるようにしたい。』と言ってもらえました。しかし自分培ってきた経験・スキルを認めてくれたことは嬉しかったのですが、実際の給料がどの程度になるのか、どういった仕事を任されるのかという点に不安もありました。そして、色々と働き方を調べていく過程において、クラウドを取り扱う会社だからこそできることがあるのに気付きました。

 社内で初めてのリモートワーカー

お互いに納得するまで作りあげた過程

 

(写真5:自宅作業スペース)

由久さん:実は私が転職して会社に入ったタイミングで、リモートワークをやってみようという話しが会社の中で出ていたんです。いろいろなツールを使ってみようとか、実際家でやってみようとか、私も検討チームの一員として3ヶ月くらいかけてやっていたのですが、その時はフェードアウトする形で話がなくなりました。ところが、私が移住を決めた時期に、facebookでマイプロ部に参加している記事を見ていた上司に「なんか会社辞めそうだよね」と言われ、私も正直に会社を辞めて帰ろうと思っていることを話すと、リモートワークの話を提案していただき、会社に掛け合ってくれました。

2017年の1月にリモートワークの話が出て、会社からの承認を得たのが2月末。会社側から由久さんへの信頼もありスムーズに話が進みます。実際に鶴岡に数週間滞在し、生じる課題を探るためにリモートワークを行い、東京にいるメンバーとも何度も話合いを重ね、見事会社から最終的なリモートワーク実施の決断が下されました。

 出勤していた頃とリモートワークの大きな違い

 由久さん:東京のオフィスとのやり取りは基本チャットで、毎日30分程度はチームメンバーとの作業状況の共有のためにテレビ会議を行っています。そのため離れていてもほぼ毎日顔をあわせます。時間の管理は、裁量労働で早く仕事をきりあげても長くなってもチームに影響なければOKというルールになっています。

では、リモートワークを始めてから感じられたメリット・デメリットについてはどのようなものがありましたか。

(写真6:鶴岡公園で家族と)

由久さん:メリットとしては、通勤時間が明確に減ったのでその分仕事以外のことに時間を使えるようになりました。一番変化したのは家族との時間ですね。子どもがまだ小さいのですが、一緒にいる時間が増えたのはとても嬉しいです。他には金銭面で使えるお金が増えたこと。家賃は東京に住んでいた時と比べてぐっと減りましたし、家で仕事をする分、外でお酒を飲む機会が減ってしまいました(笑)。

デメリットは、会社の情報や雰囲気を感じづらくなっていること。会社にいれば、周囲の会話が聞こえてきて、そこからわかることがありますが、それがほぼなくなりました。他に、家で仕事をする難しさが最初はありました。家族の理解がないと、かなりやりづらいのです。例えば、基本的に実家の2階で仕事をしているのですが、最初の頃は祖母が家にいるからと、手伝いをお願いされ、「おーい」って階段下から呼ばれるんです(笑)。それに応えると、その度に手伝わないといけない。結果、集中する時間も短くなってしまい、仕事が進まずとても辛かったです。今はこういう点も理解してくれているので助かっています。

リモートワークでも可能なコンサルタントの仕事

社内でのやり取りとは違い、コンサルタントのお仕事は実際にお客様と顔を合わせていないと成立しないと思うのですが、どのように対応されているのでしょうか。

(写真7:テレビ会議システムを使って各拠点をつないだ様子)

由久さん:今のところ、全くお会いしたことないお客様を担当することは少ないです。1年ちょっとは東京オフィスで仕事をしているので、当時お会いしたお客様と仕事をすることが多い状況です。新規のお客様であっても、直接お会いする機会を作って1度は顔合わせします。日々の業務では、お客様との打ち合わせをする際はテレビ会議システムを使ってリモートから参加しています。お客様の声を聞くこともできるし、私からも発言できる。お客様もリモートに参加者がいることをご理解いただき、まさに一緒に仕事をして下さっています。そもそもお客様の立場に立つと、顔も見えにくい、どこにいるのか分からない人と仕事するのって恐いと思うのですが、プロジェクトに参加する際は、リモートメンバーをプロジェクトに入れることを会社側からお客様に伝えてくれているようです。

リモートワークの仲間が増えることで見えてくる未来

現在社内で、東京や近郊の自宅で「半分リモート」のような働き方制度も出てきたそうですが、地方で「フルリモート」で働いているのは未だに由久さんだけという状況の中どのように感じていらっしゃいますか?

 


(写真8:社内表彰を受けた際の写真)

由久さん:現状では、弊社のお客様は東京を拠点とされるお客様が多いのですが、弊社が扱う製品はクラウドシステムが中心であり、どこにいるお客様に対してもご支援可能です。お客様の立場では近くにサポートしてくれる人がいた方が安心だろうというお話をしましたが、例えば仙台や山形県内に新規のお客様が出来るってなったら、私は日帰りで行ける距離ですし、東京のメンバーよりも柔軟に対応できます。地域で何人かいる状況が作れれば、よりよい環境をお客様に提供できるのではないかと思います。

これ以外でも、仲間を増やすことはリモートワーク事例を作ることになり、制度の改善するきっかけになります。弊社においてフルリモートが可能なのは、現在エンジニア職のみですが、リモートワークはオフィスを持たないだけと捉えると、将来的には営業や 総務、秘書のお仕事もリモート出来ると思います。

 お互いを信用しているからこそ出来る働き方

これからリモートワークしたい人やこの制度を取り入れたい会社があるとしたら、どのような事が大事になってくるのでしょうか。

(写真9:インド出張時の開発メンバーとの写真)

由久さん:結局リモートワークはお互いにコミュニケーションがとりやすい状態じゃないと成立しない働き方だと思います。私の場合は、インターネットを通してコミュニケーションを取るためのツールを使用していますし、こういったツールを使われるケースが多いように思います。逆に、ツールを使いこなせない会社ではリモートワークは難しいと思います。私の場合も、全員がツールを使いこなせない状況もありましたが、自分で使い方ガイドを作成したことで、それを見てツールを使い、コミュニケーションを取ろうとしてくれる仲間がいたから乗り越えられましたし、安心して仕事ができています。

コンピュータを使って誰かが幸せになれるものをつくりたい

最後に今後鶴岡でやっていきたいことを教えてください。

(写真10:実家の外で涼みながら仕事をしている様子   )

由久さん:コンピュータは道具であって、この道具を使って誰かが幸せを感じたり、ちょっと良いなって思えるものがあったらと思っています。会社の仕事に関わらず、鶴岡の人達にちょっと良いなと思ってもらえるものを作りたい。例えば、関係人口を増やすことにつながるものを考えていて、実現に向けて日々勉強しています。

会社では初のリモートワークに挑戦し、さらに、個人では誰かの幸せに寄り添うものを創造していきたいという由久さん。由久さんのようなエンジニアがより楽しく、より便利で新しい世界を拓いてくれるのでしょう。

(平成31年1月9日 インタビュー 文 草島侑子)

 

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