地方に移住を考えたときに、自分の希望する仕事が見つからないこともしばしば。今回は、ご自身の経験と資格を活かして、県内唯一のマンツーマンでピラティスができる施設でピラティストレーナーとして活動しているという安城さんにお話を伺いました。
安城久美さん。三人姉妹の次女として山形市に生まれ、高校卒業後は会社員として就職。その間に興味を持ったエアロビクスとピラティスの指導者として東京で活動を始める。2019年3月に鶴岡市へ移り住み、現在は、市内の医療法人にてピラティストレーナーとして、マンツーマンやグループレッスンを行う。
―ピラティスとの出会い
Q.いつからピラティスの指導者として活動されていたのですか?
A.高校卒業後は会社員として働いていましたが、その当時スポーツジムに通ったのをきっかけに、エアロビクスに興味を持ちました。仙台市でエアロビクス指導者の資格を取得。その後、東京にてフリーランス・エアロビクスインストラクターとして活動を始めました。そんな中、膝や腰にケガを負うことが多くなり、ケガの予防としてできる運動は何かないかと探して見つけたのがピラティスでした。
当時はヨガがブームで、ピラティスはまだ日本に上陸したばかりで、世間的には浸透していませんでした。ピラティスには、ヨガのような何かのポーズや、エアロビクスのように決まった順序の動きがあるわけでないのですが、その人の体のつくりに合わせたフォームで、一人一人の骨格の動きに合わせて体を動かしていくので、無理なく運動ができるのが特徴です。
(その人の骨格を見て、体の使われてない筋肉を動かしていくピラティス)
―働き方への違和感
Q.地方での暮らしを考えたきっかけは何でしょうか?
A.エアロビクスのインストラクターからピラティストレーナーになり、経験もたくさん積みましたが、その働き方に違和感を感じながら過ごしていた頃、お世話になっている方に東京以外での働き方を勧められ、首都圏ではなく地方で暮らすことを選択肢の一つとして考えるようになりました。
地方での仕事を探す中、以前から憧れていた「グランドアテンダント」の募集があるのを知り、その企業が参加する鶴岡市主催の地元就活応援セミナー(鶴岡市の友好都市である東京都江戸川区で開催)に行ったみることにしました。私は山形市出身だったのですが、鶴岡市の移住コーディネーターの俵谷さんが仕事・住まい・地域の情報など丁寧に教えてくれました。結果的にグランドアテンダントの仕事には就かなかったのですが、移住コーディネーターとの出会いをきっかけに、少しずつ鶴岡に興味を持つようになりました。
(鶴岡地元就職応援セミナーで移住コーディネーターと)
-県内唯一、ピラティススタジオを運営するクリニックとの出会い
Q.移住を決めた理由はなんでしょうか。
A.江戸川区での地元就職応援セミナーの後、山形県内でピラティスができる場所はないかなと調べてみました。すると鶴岡市にあるクリニックで行われていることを知りました。さっそく移住コーディネーターに相談をしてみると、鶴岡市の仕事体感ツアーを勧められ、直接企業訪問することになったのです。クリニックでは、ちょうど新規事業としてピラティスをはじめる準備をしようとしていたことも幸運でした。
(クリニック屋上からの月山)
山形県出身とはいえ、大人になってからは鶴岡へ行ったことがなかったのですが、月山や鳥海山など山々の素晴らしい景色、昔ながらの瓦屋根の多い古民家などに感動を覚えました。そして仕事だけでなく、住居についてもすぐに話がまとまり、「こんなにポンポン話が進んでいくのはきっと何かの巡り合わせだ」と感じ、移住を決めました。
(引っ越ししてきた当初に自転車で見に行った鶴岡公園の満開の桜)
-まずは現地へ来てほしい
Q.移住を考えている人にアドバイスがあれば教えてください。
A.私もそうでしたが、行ったことのない場所だと、土地勘もなく地名を聞いてもそこまでたどりつけなかったり、ましてそこでの暮らしなんて想像もつきません。まずは、季節の良いときに行ってみることをお勧めします。それから、車はあった方が断然便利です。はじめは自転車だけでしたがやはり車が必要だと思い購入しました。また、移住して間もないときは知り合いも少ないため、周囲の方に話かけたり、地域のイベントに参加していくと良いと思います。私の場合、転入先に知り合いがいた訳でもなかったので、春と秋に鶴岡市主催の移住者交流会に参加してみました。春は日本遺産にも指定されている羽黒地域の歴史文化を学んだり、移住してきたばかりの人たちと情報交換をすることができました。
(移住者交流会でピラティスの紹介をする安城さん)
また秋の交流会では冬道運転講習会も含まれていたので、車を購入し間もなかった私にとっては、得るものが多かったです。
鶴岡は地域性なのか、なかなか自分をすぐに出さないシャイな方も多いので、自分から進んで話しかけたり情報をとりに行くなど積極的に動いてみると、きっと素敵なご縁を運んできてくれると思います。
-地域のおばあちゃんが日常会話で「ピラティス」という言葉が出てくる運動に
Q.これから何かしたいことがあれば聞かせてください。
Aヨガやエアロビクスのように頑張って体を動かさなくても、体はもっと自然に動くというのが「ピラティス」です。ケガで苦しむ方にもピラティスという運動があることを伝えたい。今はそう思って活動を続けています。県内でもまだまだピラティスの認知度は低いので、もっと老若男女問わず知ってもらうことで、ゆくゆくは農作業をしているようなおばあちゃんが「今日ピラティスやってきたんだ」と自然と会話に出てくるようなレベルまで浸透していったら良いなと思っています。
(今野俊幸医院長(中央)、今野陽介先生(左)と一緒に)
文:伊藤秀和