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№64 教育への違和感が導いた、海辺暮らし「やらないより、やった後悔を選びたい」

 鶴岡市に移住した人々の日常をリアルな体験談とともに紹介する“鶴岡市移住インタビュー”。今回は、2023年に神奈川県川崎市から、美しい海と豊かな自然に囲まれた湯野浜エリアに一家で移住した藤原さんにお話をお伺いしました。

プロフィール

小さな違和感が、家族を動かした

鶴岡に移住したきっかけは何ですか?

佑太さん
 もともとは川崎市内のマンションに家族で暮らしていて、僕は都内へ通勤していました。2020年のコロナ禍で会社がリモートワークを推奨して、在宅勤務が選択できるようになりました。そうなると、首都圏に住み続ける理由がなくなったんですよね。

 もうひとつ大きかったのは、娘の学校環境です。人口が多いエリアなので、小学校は36人6クラス、全校で1000人規模。休み時間に校庭や体育館を使うのにも曜日や時間で区切られていて…。1クラス20人ほどの村で育った自分には、子育て環境の違いに驚きの連続でした。
 
 授業参観でも、36人もいるクラスでは一生懸命手を挙げても先生に当ててもらえない。先生もたくさんの生徒たちが相手では、子ども一人ひとりにしっかり寄り添う余地がないように私たちには見えて。僕も妻も教員養成の大学出ており、周囲に教員が多かったこともあって、より一層「首都圏に人が集中するとこうなるのか」と痛感しました。その日の帰り道に、妻と移住を決意しました。

地方での教育に不安はなかったですか?

佑太さん
 特になかったですね。僕自身は、学習塾に通わせるようないわゆる「お受験コース」に価値を感じていません。お受験対策は現代においてはインターネット等を活用すればどうにでもなると思っています。

 それよりだったら、ひとりひとりに目を向けてくれる時間と空間があって、きちんと自分に目を向けてくれていることで自己肯定感が上がる方が大事だと思っています。

移住の選択肢は鶴岡の他にどこかありましたか?

佑太さん
 複数候補が浮かびましたが、最終的に移住先として鶴岡市を選んだ一番の理由は、妻の故郷である三瀬地域にあります。年に2〜3回帰省するうちに、海もあって食材も美味しく、環境に恵まれた鶴岡を「素敵だな」と感じるようになりました。僕自身は秋田の雪深い地域で育ったため、ずっと海に憧れがあったことと、鶴岡であれば近くに肉親がいることも、大きな安心材料でした。加えて、空港が近いことも大きなポイントです。関東圏の郊外や、秋田県沿岸への移住の選択肢もわずかにはありましたが、やはりルーツのある鶴岡こそ最適だと考えました。

改めて出会う風景、食のおいしさや新しい発見がたくさんあると妻の麻里さん

佑太さん
 移住を考えたのは2022年9月で、2023年春に引っ越すまでの約半年間で一気に準備を進めました。授業参観が終わると、すぐ家を売りに出しました。約2週間で買い手が見つかり3月末に引き渡しました。

高台にある新築一軒家の土地探しもインターネットで。Googleマップで見つけた、海が開ける湯野浜の雰囲気を気に入りハウスメーカーに相談、帰省のタイミングで最終決定したそう

実際に住んでみて鶴岡暮らしはいかがですか

佑太さん
 移住後はリモート勤務で、月に1〜2回は出社が必要でしたが、近くに庄内空港があることで大変助かっていました。飛行機で移動すれば約1時間で東京に着きますし、必ず座れるので満員電車のストレスもありません。その快適さを同僚からは羨ましがられるほどです。

 冬の気候は、風が強すぎて激しいですが、出身地の東成瀬村に比べて雪が積もらないのは楽です。春夏秋は景観がいいですよね。夏になると湯野浜では観光協会が主催するミニ花火が8月上旬からお盆過ぎまで毎日上がっていて、自宅から家族とその光景を楽しめることに幸せを実感しています。

自宅で家族と一緒に見られる打ち上げ花火は最高!

麻里さん
 私はUターンですが、高校生の時とおとなになってからの地元が全然違って見えます。移住者のような感覚で、改めて出合う景色の美しさや、ごはんの美味しさに気がついたりと、新しい発見があって、戻ってきて良かったと思います。

 教育の面でも、今長女が通っている湯野浜小学校は12人の1クラス、全校では78人と規模は小さいですが、だからこそ委員会等で一人一人にちゃんと役割があったり、授業中に挙手したらあててくれたり、きちんと目を向けてくれる感があります。木造校舎も温かみがあって気に入っています。

鶴岡の好きな食べ物や場所を教えてください

佑太さん
 好きな食べ物は海産物、だだちゃ豆など、夏の味覚が特に美味しいと感じます。妻の実家でいただく刺身も最高で、結婚のご挨拶に伺った際に出してもらったイカ刺しの美味しさは衝撃的でしたね。

一番好きな場所は住んでいる自宅がある湯野浜です。海もあって、温泉もあって、とても贅沢な環境だと思います。

妻の実家・民宿仁三郎のお刺身が「一番うまい!」と佑太さん

暮らしを変えたら、自然と増えた新たな挑戦

プライベートサウナをオープンした経緯を教えて下さい。

佑太さん
 元々サウナが好きだったこともあり、自宅用として設置しました。移住のタイミングで、妻に少しわがままを言って導入を決めました。そのうち自分だけで楽しむのはもったいないと思い、保健所などの申請を経て、2024年7月にオープンしました。

麻里さん
 サウナは私が個人事業主として土日を中心に営業をしています。今まで関わることがなかった経理についても、本を読んで勉強しています。新しい職種に不安もありましたがチャレンジすることで視野が広がって、やってみてよかったと思います。元々人と接するのも好きだったので、お客様との会話も楽しいですね。

佑太さん
 サウナ好きな方とつながれるので話題も広がりますし、色々な人と出会えるのでとても面白いです。何より利用された方が赤い顔で(笑)「すっきりしました!」と言って帰られる姿を見ると、「やってよかった」と心から思えます。

サウナの他にも、新たにチャレンジをされているとか。

佑太さん
 仕事や家族以外のことで言うと、鶴岡市拠点の企業(株)SHONAIの代表が塾長の「SHONAI政経塾1」に2期生として受講しています。

 人口減少が進んでいることに対して、何らかのアクションをしたいと思ったのがきっかけで参加しました。子ども達が住む地域が縮小していく、そこで何が出来るか考えてみようと。参加してみると学びの他にも、地方を何とかしたいという志のある人が全国から集まっているので刺激になっていて楽しいです。

  1. 庄内地域の若手経営者や地域の担い手を対象に、政治・経済・地域課題などを学び合う場として設立 ↩︎

暮らしてわかる、鶴岡の良さと伸びしろ

鶴岡に来て休日や余暇はどんな過ごし方をしていますか?

佑太さん
 週末に予約の多いサウナの運営を妻としていることが多いです。予約が少ない時は、子ども3人を連れて児童館や、水族館、公園、SORAIに連れて行ったりしています。市内に限らず、内陸エリアにある無料の全天候型の遊び場にも行きました。

 これまで、大人ひとりで小さい子ども3人を連れての海あそびは難しくてできなかったので、今年こそは海遊びを満喫したいと思います。

移住者視点で、鶴岡がもっとこうなるといいなという希望はありますか?

佑太さん
 市内にある有料の遊び場が、無料だったらもっと利用しやすいと思います。

あとは、交通インフラの利便性が上がるといいなと。庄内空港があるのはいいですが、市内交通バスの終わる時間が早く、出張帰りや仕事終わりの遅い時間帯に利用できないのがネックです。

自家用車以外の選択肢が少なすぎる現状で、湯野浜は郊外なので周辺の親御さんも子どもの習い事や部活動などの送迎にほぼ丸1日を使っています。

例えばですが、安全性を担保した上で、市街地に出掛ける人と子どもの送迎が出来ない親をマッチできる助け合いの仕組みなどがあれば、行政に頼らずともできることがあるのではと思っています。

すでに様々なことを取り組んでいますが、これからやってみたいことはありますか?

佑太さん
 妻の実家は漁師をしていて、民宿も営んでいます。そこの料理は本当に美味しいです。ただ、残念ながら海の環境の変化で獲れる魚の量や種類が変化していったり、漁師の後継者が減っているのが現状です。
  鶴岡市は多様な食文化を背景に「食文化創造都市」として発信しているので、漁業の存在にも、もっと光が当たると嬉しいですね。僕自身は本業がIT系なので、その知識や技術と組み合わせて、何かお役に立てることはないかと模索しています。


 鶴岡へ引っ越して最も大きな心境の変化は「チャレンジする習慣が身についたこと」と語る藤原さん。移住の決断や行動がとても大胆で、同僚からもクレイジーと言われるほどです。「やらない後悔よりやった後悔!」と、藤原家流の鶴岡暮らしを楽しんでいます。新しいチャレンジが待ち遠しいですね。

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