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No.26-後編「人生の何に豊さを求めるか」で選んだ地元での暮らし

今回の移住者インタビューは2016年に東京都からUターンされた岡部浩美さんと千信さんご夫妻にお話を伺いました。岡部さんご夫妻は現在、コーヒー豆専門店「千一珈琲を営み、自家焙煎のコーヒー豆の販売の他に、イベントやコーヒー教室を通じて地域の人々の憩いの場となるよう取り組んでいます。前編はこちらから⇒前編

鶴岡に移住することで収入が減るという点で移住を迷っている人たちが少なくないのですが、そういう人たちに何かアドバイスがあれば教えてください。

 千信さん:僕は、今の世の中、どこに勤めていても安定的なところはないと思っています。それは雇用が確保されているとか以前の問題で、例えば精神的や肉体的に耐えられるのかとか、コンプライアンスなどは今までと違いきっちりしているから、それが東京や今いるところで続けられますかっていうのがあると思うんです。それが本当に自分のやりたいことなのかというともあります。だから、場所がどうのこうのって言っているのはたぶん逃げの話であって、来て、何でもやればいいと思います。頭で悩み迷う前に早く帰ってきて何かやった方いいよって思います。

(荘内大祭にて 写真提供:岡部さん)

浩美さん:「人生の何に豊かさを求めるか」というところをよく考えた方がいいです。私は東京にいていいお給料をもらって、いい生活ができて、毎日色々な刺激があって楽しむ生活よりも、こちらで四季を感じながらゆっくり子供と向き合える生活の方がいいと思いました。ただ、100パーセント子供のために戻ってきたわけじゃないんですよ。自分自身が東京に疲れていたんだと思います。子育てに関しては、東京にいたらもっと色々な文化的な体験ができるかもしれないし、教育の選択肢もたくさんあります。何がいいのか子供自身が決められないうちは、子供にとって何がいいかっていうのは親が判断することで、絶対的な正解はないのじゃないかと思っています。じゃあ親は何に豊かさを求めるのかと言えば、自分自身がどちらに居た方が良いかということです。私は、月に1回もらう高いお給料のために毎日毎日満員電車に揺られて、やりたくない仕事をして、ストレスで胃が痛くなる生活よりは、収入は少ないけどこっちでのんびり暮らす方がいいなと思いました。

 

(町内会の夏祭りにて 写真提供:岡部さん)

UIターンするにあたってこれだけはやっておいた方がいいことは?

 千信さん:地元の人とつながることです。まず地元を知っている人とつながらないと、いろいろな壁にぶち当たることが多いと思います。文化的なことについても、食べ物もそうだし、何をするにしてもです。僕は消防団にも入って、自治会や町内会にも頻繁に顔を出しますし、そうすれば、町の中でも声をかけてもらったり、お客さんになってもらったり、生活していても情報が入ってきます。ですから人づき合いが煩わしいと感じる人は、おそらく難しいのではと思います。お義母さんがよく言っていたんですけど、「鶴岡に来たらとりあえずご飯は食べられる」って。それは人間のつながりを自分で保つ努力をした上での話で、誰かに何かやってもらおうって思ったらたぶんダメで、自分でいろんな人と会ったりとか話したりとかしないとダメだと思います。僕は周りの人にかなり助けてもらったり、つなげてもらったりしています。つながりを大切にすることで、自ずと道は開けてくるんじゃないかなと思います。

(写真提供:岡部さん)

浩美さん:東京にいるのとは違った人付き合いが求められると思います。ご近所さんも仲がいいというか、近いから畑仕事をしていたら声かけてくれたりとか、大根もらったり柿もらったり。

千信さん:実はここの売り上げが悪かったら、自給自足できるように畑もしていて、ほったらかしの無農薬でどこまでできるかやってみました。トウモロコシは全然ダメだったし、ナスは3つ生っただけだったかな?トマトはものすごくたくさん採れました。ジャガイモも結構採れました。キュウリ、エダマメもやってみました。

(写真提供:岡部さん)

困ったことや、来てみて思っていたのと違うとかギャップなどありましたか?

千信さん:最近思ったのが、僕はよそ者だから外国人の感覚なんですよ。そもそも文化の違うところにきたら「あ、そういうものなんだな」って思って入っているから、自分が今まで住んでいた環境とすり合わせて「これがちがう!」とかいうのが全くないんですよ。だからそこに合わせてこうすればいいっていう感じです。

浩美さん:家の結露くらいですかね(笑)。フィルムを貼ってみたらり、対策は練ったけどなかなか解決しません。去年はずっと窓を拭いてました。

千信さん:珈琲屋をオープンして2か月になり実際やってみて、お客さんがリピートで来て下さるので手ごたえはあります。最初は裏通りだし、寒いしどうなるかと言われていましたが、正しいものを誠意をもって対応すれば来ていただけるというのを実感しています。鶴岡は人口の割に自家焙煎の珈琲屋さんが多いと感じます。僕が知っているだけで庄内に9店もあるんです。人口的なキャパシティーの問題はこの地域は絶対あるので、そこを打破する次の一手を考えながらやればというところだと思います。特にここで商売できないとか絶対なんとかっていうのはないです。

(写真提供:岡部さん)

ここの場所を選んだ理由は?

 千信さん:ここを選んだ理由は、「人」です。僕の場合、阿部久書店の阿部さんがいるからです。阿部さんと知り合い「みちくさ舎」に繫いでいただきました。ここはどんな人でも、通ってくれる場所、そして靴を脱いで入ってくる場所なのですよ。人の繋がりがなかったら、見逃していたと思います。

(写真提供:岡部さん)

これから先、こうしていきたいというビジョンはありますか?

浩美さん:お店のギフトなどを手がけながら、私自身のナリワイを少しずつやっていきたいと思います。英語で鶴岡の商業施設や小さいけど素敵なお店の発信をしたいと思います。「英語で発信したいけれど、英語を話せる人を雇えない」というお店を紹介したり、まずはこのお店の英語発信からしたいと思っています。

千信さん:僕の方は、珈琲屋さんではありますが、「千コミュニケート」という株式会社を設立していて、会社の名前にもあるように「繋がることが重要」と考えます。カフェであったり、インスタントコーヒーの開発であったり、そういったものを繫いでビジネスにしていく形にこれからはしていきたいと思います。珈琲屋はメソッドの一つでしかなくて、今は基盤となるこの店をもっと強固にしていきたいです。

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