齋藤寛子さん
宮崎県出身の33歳(2019年インタビュー時)。高校卒業後、農業大学校へ進学。その後アメリカでの農業研修を経て宮崎県農業大学校の研修センターに非常勤職員として2年間勤務。結婚のため、24歳で鶴岡に移住。その後、就農し夫と共に長ネギ・枝豆・ふきのとうを栽培しています。
結婚前から農業の勉強
(アメリカでの農業研修 写真提供:齋藤寛子さん)
Q.いつから農業に興味がありましたか?
A.寛子さん:高校卒業後、地元宮崎の農業大学校に進学、その後、国際農業者交流協会の農業研修を利用してアメリカのワシントン州とハワイに1年半行きました。ワシントン州では大学に通いながら農業や英語の勉強をして、その後ハワイに1年間配属され、農家に住み込みで勉強しました。私が応募した時は、全国から40数人集まりました。
鶴岡には2度訪れただけで移住を決意
Q.鶴岡に移住するきっかけは?
A.寛子さん:鶴岡に初めてきてよく覚えているのは、8月なのに寒すぎて鳥肌が立ったこと。夫とは研修先のアメリカで知り合い、付き合っていた時から自分は鶴岡に戻るという話をしていたので、結婚するということは、鶴岡に嫁ぐと思っていました。結婚前に鶴岡には2度しか行ったことはありませんでしたが、知らない土地に住んでもなんとかなる、何とかしていくしかないなと思っていました。今は夫の両親と一緒に暮らしていますが、来て間もない頃はアパートに二人で暮らしていました。来てすぐの秋は、ずっと小雨で、宮崎の気候との違いを感じました。冬は晴れの日がなく雪が降っているので、最初の1年はかなり気が滅入っていましたが、今では子どもとの雪遊びが大好きになりました。
就農は大変の連続
寛子さん:夫が新規就農者として行政からの支援を受けようとしましたが、過去に農業法人の経営に携わっていたことから新規就農者として認められませんでした。そこで私が新規就農者として申請することにしましたが、申請にあたっては、鶴岡市の就農アドバイザーに大変お世話になりました。一緒に県農業技術普及課に行ってもらったり、支援制度の情報をいただいたりと、いろいろと親身になって相談を聞いていただいたことにとても感謝しています。現在は、私が経営者となり夫は専従者として一緒に農業をしています。
(写真提供:齋藤寛子さん)
まずは人間関係と信頼関係と作る
Q.鶴岡で新規就農する人へアドバイスをお願いします。
A.寛子さん:鶴岡で農業がしたいと思ったら、まず人間関係を作ることだと思います。私の場合は、新規就農アドバイザーや共同経営者、農業機械を貸してくれる方に出会えたのが何より大きかったし、協力してくれる方が居なければ、新規就農は難しいと思います。
農地を見つけるのは難しい
寛子さん:就農相談の窓口には、市役所や農協、県の農業技術普及課がありますが、直接、農地を貸してくれる方と知り合うのが近道だと思いますが、親が農家でもないとそういう機会はなかなかないんです。どこの誰だかわからないヨソ者に農地は貸したくないという心境が働くのだと思います。貸してもいいという土地も、条件の良くない土地などを紹介されることもあるようです。農地だけではなく、収穫した作物を包装する作業場やトラクターを格納する場所も必要です。今はそういった場所の間借りをしていて、周囲の人のご協力をいただきなんとかやっているという感じです。農業をしたい土地に住み、そこから地域に打ち解けていくのが一番早いんだろうと思います。
(写真提供:齋藤寛子さん)
Q.これからやってみたいことはありますか?
A.寛子さん:今は余裕がないのでまだ先の話になりますが、毎年農業をやめる人がたくさんいて、このままでは鶴岡の良い農地が荒れていってしまうので、経営できる面積を増やしたりして、私たちがやれることをやって少しでも農業に貢献したいと思います。
また収穫した農作物には必ずキズや曲がったものがあり廃棄しなければなりません。食べられるけど出荷できないのはもったいないので、加工品も作りたいと夫と二人で話しています。遠い将来になると思いますが、自分たちで作った食材を提供する農家レストランを持てたらいいなって思います。
Q農業と家事と育児の両立はどうやっていますか?
A.寛子さん:朝は5時半に起きて朝ごはんを作ります。朝8時から夕方6時まで子どもたちを保育園に預けその間は農業です。昼食は、蔵を貸してもらっている共同経営者の家で食べています。夕方子供たちを迎えに行ってから夕飯を作ります。最近では主人が食事を作ってくれることもあるので、すごく助かっています。いずれは交代制で休みが取れるようにしたいと思っています。子供たちを畑や配達にも連れて行くのですが、作業を楽しんでくれるので、子どもの成長にはいいと感じていますし、トラクターに乗っているお父さんがすごくかっこいいとも言っています。
九州と比べて違うところ
寛子さん:九州の農業と違いは多くありますが、まず感じたのは、ナスやネギなどの一般的な野菜でも品種が全然違うこと。宮崎では小ネギや葉ネギをよく食べますが、長ネギはほとんど食べません。枝豆も味や風味が全然違うし、鶴岡の人ほど食べません(笑)。引越しの挨拶周りの時に、どこの家に行っても枝豆をボールいっぱいに出されたのはびっくりしました。スーパーの野菜売り場を見ているだけで面白いです。移住当初は、こちらで友達を見つけようと思って会社で働いていたのですが、やっぱり方言がわからなくてとても苦労しました。慣れてくると話を返してくれるんですけど、鶴岡はシャイな方が多いですよね。
(2019年2月6日 インタビュー)