No.33 鶴岡でUターン起業!地元食材を活かしたキッチンヵーで加茂を元気に!

年間50万人の観光客が集まる加茂水族館前に、地元食材を使ったキッチンカー「ハマヤキッチン」が大漁旗をなびかせ営業しています。1年前に奥さんとお子さんを連れて地元・鶴岡にUターンした佐藤勝彦さんです。ここでの常設営業許可は今まで下りなかったのですが、加茂を盛り上げていきたいという熱い思いが、地元や、加茂水族館、マルシェ事業者の皆さんに届き、2019年7月から営業をスタートさせました。

  (※写真1:インタビューを受ける佐藤勝彦さん)


佐藤勝彦さん、43歳。実家は旧藤島町の農家で、山形市にある理容美容の専門学校を卒業後は鶴岡市内を中心に理容師、美容師として活動。その後、バックパッカーとして渡米。帰国後は東京で輸入雑貨の卸売業、不動産業を経験し鶴岡にUターン。妻と子、四人暮らし。


―鶴岡に戻ろうと思ったきっかけを教えてください。

  年を重ねるに連れて、「田舎ってカッコイイ」と思うようになったからです。不動産の営業マン時代は、夜の接待や休日のゴルフなど、朝から晩までそして休日も仕事の毎日でした。それが当たり前だと思っていた生活でしたが、家族を持つようになってからは「誰の為に仕事をしているのか、出世して何になるのか」と疑問に思うようになりました。そのとき私は、39歳で妻と1歳になる子どもの3人暮らしでした。私たち夫婦は、都会での子育てより自分たちが育ってきた田舎暮らしの方が、子どもたちにとっても良いのではないかと感じていました。若い頃は感じなかったけど、歳をとってから感じるようになってきた鶴岡の良さ、たとえば、海や山などの雄大な自然や、歴史ある食文化など。一度東京へ出ることにより知ることのできた鶴岡の魅力に囲まれながら家族で一緒に過ごしてみたいと思うようになりました。

(※写真2:鶴岡市・加茂地域を上空から撮影)

―東京に住んでいたとき、鶴岡との関わりはどうでしたか?

  20代半ばの頃は東京に住んでいましたが、年に数回は鶴岡に戻ってきていました。当時から同世代の仲間はみんなアクティブで、自分たちで事業をはじめる人も多く、私自身にとっても彼らは大きな刺激になっていました。「この仲間で何かやりたいね」という話が出てきた時、10店舗近くの飲食店が集まり、バンドやダンスなどの音楽を交えた「荘内祭」というイベントを行うことになりました。

  (※写真3:当時を振り返りながら、地元の仲間との鶴岡での活動をイキイキと話す佐藤勝彦さん)

―キッチンカーを始めた経緯について教えてください。

  現在、私が住んでいる加茂には年間50万人の観行客が世界中から来ます。観光客の目当ては、世界一のクラゲ展示数を誇る加茂水族館が中心ですが、沿岸部にはまだまだ知られていない加工品やおいしい海産物などもたくさんあります。また加茂の事業者の中には、良いものは作るけれど、販路を持たない事業者も多くいます。こうしたおいしい海産物や加工品をもっている事業者と、加茂のおいしい海産物を探している観光客を繋げながら、この大きなマーケットを活かして地域を盛り上げていくことが出来たらいいなと思い、移動販売車に目をつけました。

  しかし、キッチンカーを始めるにあたり、最初は多くの方に難しいと言われてきました。叱られることもたくさんありましたが、くじけずに、諦めずに、粘り強く、何度も熱意をもって思いを伝えて回って交渉を繰り返しました。様々な方たちに自分の想いを伝え、地道に交渉していく中で、キッチンカーで営業していく目途がたち、2018年11月に「株式会社KamoDesign」として法人化しました。この地域の自治会や地元の方々、加茂水産高校や加茂水族館の関係者のほかマルシェ事業者、昔から地域に関わりのある先輩方など、多くの方にお力添えをいただき、2019年7月にオープンすることができました。この場を借りてお世話になった方々に御礼をお伝えしたいです。

  (※写真4:大漁旗を掲げ営業するキッチンカー)

―起業時は順調にスタートできたのでしょうか?

  キッチンカーのスタートに関しては、補助金を頂いたので、ほぼ費用はかからなかったです。東京にいた時から、若手経営者が次世代の経営者に起業のフローを教えてくれる場所へも出入りしていたので、自分はそこで補助金の申請の仕方などを学びました。

―地方での暮らしはどうですか?不便さはありますか?

  不便さは全く感じません。目の前がビルか海かの違いくらいですかね。大きな変化としては、家族と過ごす時間が大幅に増え幸せを感じることが増えました。今はキッチンカーで営業をしていますが、仕込みを行っていると子どもが「このサザエは安すぎるよ(加茂産のサザエ2ケ500円)。あまり安いとお客さんもあまり良いものではないと思って、買ってくれないよ」とか、「もっとこうした方が良い」とか、子ども目線でいろいろとアドバイスをしてくれます。

  (※写真5:たくさんの子どもたちもキッチンカーに遊びに来てくれました)

―今後はどんな展望がありますか

  株式会社KamoDesignは地域を盛り上げていくための最初の一歩と考えています。ここ鶴岡では、みんなこうした事業をやりたいという思いはあるけど、その手順や動き方をちゃんと教えてくれたり、活動を教えてくれる存在が多くないと感じました。事業資金を集めるにしても、借りるのか、補助金を使うのか、自分の預金を使うのか、それを事細かに教えてくれて伴走してくれる存在があるだけでチャレンジは増えると思います。また、販路開拓に関しても、よい商品ができれば人と人を繋げていくそうした場所がないので、もっとこうした想いを持ち創業したい人達が繋がり、みんなで地域を盛り上げていけば良いんじゃないかと思います。私が起業し、ここで営業をすることで、同じように「ここで営業したい」という方はどんどん増えていくと思いますし、そうした新規事業者が増えるようにお手伝いできればと思います。そして熱量を持った人が増え、その活動が広がっていった先に地域の活性化があるのだと思っています。

  (※写真6:加茂地域の方々)

―起業をしたいと思う方へのアドバイスをお願いします。

  諦めずに何度も熱意を持って思いを伝えること。「ここでやりたい」「これをやりたい」という自分の情熱があるなら、その思いに従って突き進めばよいと思います。正解の方向には困難や難題が待っています。困難にぶつかっても楽しみながら進んでいくことで、応援してくださる方が現れたり、協力して下さる方が現れて自信が付きました。ポジティブな想像や夢を膨らませてがむしゃらに自分の人生を楽しみたい方が増えれば嬉しい限りです。楽しい事よりつまならい事、成功する事より失敗する事、楽な事より辛い事の方の方が多いかもしれませんが、そんなチャレンジを通して、一緒にこの地域を盛り上げていきましょう。

  (※写真7:加茂の漁港の夕日)

  (文・写真 伊藤秀和)