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No.47シェアハウス『こがたん。』が叶える鶴岡うみ暮らし

2020年8月に鶴岡市の沿岸部、小波渡地区に移住した宍戸 亜紀子さん。宮城の海に近い町で生まれ育った彼女にとって、ここはとても居心地の良い場所だという。そんな小波渡での暮らしについて、移住からもうすぐ1年というタイミングでお話を伺った。

<プロフィール>

宍戸 亜紀子さん

宮城県出身。

趣味の山歩きと、紅花染を通して山形に興味を持ち、5年前に山形県上山市で暮らし始める。その後山形県内のいくつかの場所に移り住み、長野県の白骨温泉での就業などを経て鶴岡市に移住。和装が好きで、着付けは師範の資格を持つ。鳥海山が好き。

シェアハウス『こがたん』の内覧会で鶴岡市への移住を決めた。

亜紀子さんは、海の見えるシェアハウス『こがたん。』の入居者第一号だった。鶴岡への移住はこのシェアハウスとの出会いから始まる。

亜紀子さん「山形は好きだけど、庄内は実家からも遠いので、自分がまさか住むことになるとは思っていませんでした。でも、実は山形県で暮らし始めた3年前から、鶴岡市の沿岸部には2ヶ月に一度くらいの頻度で訪れていて、鶴岡の人との繋がりも多かったんです。」

(写真提供:宍戸亜紀子さん 移住する以前の亜紀子さん。鳥海山の大雪渓の沢にて。)

「だから内陸での暮らしに区切りがついたとき、今度は海沿いに住んでみたいと思って、空き家バンクで海沿いの物件を見たりしていました。なかなか丁度いい広さのところがなくて、どうしようかなと思い、鶴岡市役所の移住相談窓口にも行ったりしました。でも仕事と家がないと引っ越すのは難しいかなと思って、その時はひとまずご縁のあった長野の白骨温泉で働きました。」

「2020年4月のタイミングで、Facebookでたまたま『こがたん。』オープンのニュースを見ました。新型コロナウイルスの様子を見つつ、6月くらいにどんな場所か知りたいと思って一度見に行きました。その時、シェアハウス近くの笠取峠まで行ったら、道すがら地元のおじいちゃん、おばあちゃんに会って、お不動さんの中を案内してくれたり、この辺りのことを色々と教えてくれました。親切にしてもらって、なんだかこのまちの雰囲気も良くて。

町の空気と人がきっかけで、7月に『こがたん。』の内覧をした時にここに住もうと決めました。」

幼い頃から人が行き交う場所で暮らしてきた。そんな自分にぴったり合う場所。

シェアハウス『こがたん。』に住むことが決まり、8月末に小波渡に引っ越してきた。

6月に鶴岡市内にあるコールセンターでの仕事も決まり、不安もなく移住できたという。

亜紀子さん「これまでも色々な場所で暮らしてきたので、移住に対して特に迷いはなかったですね。その時々に、思ったままにという感じで生きてます。決め手は海に近くて、鳥海山の見える所に住みたいという希望がどちらも叶う場所だったということでした。

それに、もともと生まれたところが浜町で、一緒に住んでいた祖母がすごく社交家で。赤ちゃんからおばあちゃんまで、色々な人が毎日、日替わりでお茶を飲みにくるような家だったので、お裾分け文化とか、お茶のみとか、そういうのがある地域に住みたくて。ここはまさにそんな感じでした。

茄子やピーマンをくれる人がいたり、貝やお魚が届いたり、冬時期に『みんなで鍋したいよね!』と話していたら、土鍋が届いたり。ここは海が近いだけでなくて、線路の上に段々畑もある。人や物が願えば集まってくるような感じです。自分もお返しとして、実家から届いたジャムをあげたり、よく花屋に行くので、多めに買ってお裾分けしたり。もともとの浜暮らしでの経験があるので、そういう関係が自然に感じます。」

実際に暮らしてみて、困ったことは特になかった。


「コロナの影響もあって、8月から11月まではこのシェアハウスにひとりで暮らしていました。地域的に新しい人があまり来ない土地柄なので、はじめは珍しい存在だったみたいです。近くに住む方が、毎日同じ時間、朝と夕方にお散歩に行くことに気づいてから、一緒に行かせてもらったり、自分からちょこちょこ声を掛けることで、すこしずつ知り合いになった感じでした。と言っても、慣れるまで1週間くらいだったかな。」

持ち前の明るさでまちに馴染んでいった亜紀子さん。

「冬の時期、突然朝の6時くらいに『今日から岩海苔が摘めます』という放送が入って、知り合いの漁師さんにやってみたいといったら、近くに住むおばあちゃんを紹介してくれました。真冬の雨風の中、80歳くらいのおばあちゃんに連れられて海に行きました。夢中で岩海苔を摘んで、最後は二人して波をかぶって帰ることに。そういう経験を一緒にしているから徐々に警戒心を解いてくれたのかな。」

「買い物は市街に働きに行く時に、まとめて買うようにしています。隣の三瀬に夜7時半までやっている商店もあって、そこにもよく行きますよ。地元の商店に行くと、色々な情報も教えてもらえるから助かります。小波渡にも、毎日ではないですけど、元民宿の一角で朝からやっているお店もあるし、夕方に大きいトラックで移動販売の車も来ます。」

買い物、地域の方との関係性、ここでの暮らしで困ったことは特にないと話す。

田舎暮らしの不安要素になりそうな『虫』問題も、もともと山歩きが趣味の亜紀子さんにとっては何でもない。

「小波渡のコミセンがアブだらけなんです。この間、初めて刺されました。去年の10月まではこのシェアハウスに網戸がなくて。蚊取り線香だけで生活していましたが、蚊くらいなら全然平気なタイプなので、私は問題なかったです。」

ロケーション抜群。海沿いのまちならではの過ごし方。

海の見えるシェハウス。理想的とも思えるような環境で、日々を満喫している。

「出勤前に知り合いを呼んで、バルコニーで朝ごはんを食べたりもします。ハンモックがあれば最高だなぁ。そういえば、この前、しな織りの体験をしてきました。1回目で木から皮を剥いで、今度はそれを煮たものを川で洗うという内容でした。虫に刺されたりもしましたが楽しかったです。」

「いい暮らしです。ロケーションがとても良いです。夏には夕陽が目の前で、すごく良い。仕事から帰ってきて電気もつけないで夕陽を眺めたり。夕陽は沈んだ後のマジックアワーがすごく綺麗です。宮城だと山に沈むので、夕日が海に沈むのは日本海ならではだと思います。」

「ここにきてから何にもしない時間が増えました。ぼーっと海を見て一日過ごすこともあります。友人が遊びに来た時も、電線にある蜘蛛の巣をずっと見て、珈琲を飲んで。普通だったらどこかで待ち合わせして、食事、という風になるけど、ご飯もここで食べてしまうので、1日ただゆっくりして終わったり。季節が変わっていくのがすごくよく分かります。夏と冬で海の色が全然違うことも分かりますね。」

「隣の三瀬には3年以上前から何度も来ていて、知り合いも多いんです。地元のお豆腐屋さんとか、卵焼き屋さん、商店のご主人も、イベントがあると声を掛けてくれたり、近隣の人との関わりがあるのがとても良いです。」

小波渡から堅苔沢へ。

シェアハウス『こがたん。』は入居条件が最長1年なので、宍戸さんはもうすぐ引っ越しを予定している。

「次に住む地域には、三瀬も候補に挙がりました。ただ自分にはもう少し小さいまちが良いなと思いました。ここだと、小波渡地区と堅苔沢地区をあわせても三瀬よりも小さいです。そこが気に入っています。」

「シェアハウスを出たら、春までは堅苔沢に住むつもりです。その後のことはまだわからないけど、小波渡の人が寂しがってくれて、家を探してくれたりしています。」

(写真提供:宍戸亜紀子さん 8月末にシェアハウス『こがたん。』を卒業した。)

家を探すにも、インターネットだけでなく、人伝てに情報を集める。

「実際に動いて人と話すことが大切。メールとかのやり取りもいいけど、実際に顔を見て話した方が雰囲気もわかると思います。田舎に住んだら絶対に、顔と顔を合わせてのコニュニケーションばかりになるので。今後移住される方も、来る前にその雰囲気を知っておくのは大切ですよ。」

これからも海沿いのまちで暮らしていきたい。

亜紀子さんは、インタビューの最後に今後の展望を話してくれた。

「湯野浜と加茂にもシェアハウスがあるので、鶴岡の海沿いのシェアハウスで連携して何かできたらいいなと思っています。

私は『こがたん。』の入居者ですが、今は入居者募集にも携わっているので、例えばここがいっぱいだった時に、『湯野浜や加茂だったら空いている』ということを伝えて繋いで行けるような形を作りたい。今は自粛で難しいけど、今後シェアハウスの住人か集う交流会も開きたいです。誰かと誰かを繋ぐようなことが得意だと思うので。」

「もうひとつ。小波渡のコミセンは廃校の1階を利用しているのですが、2階の教室がまだ空いているので、そこを子供の遊び場とか地域の人、外の人も来て集まれるような場所作りをしようという動きがあります。」

人が集い、行き交う場所が亜紀子さんの日常。

社交家なおばあちゃんの背中をいつも見ている。

「このエリアに定住したい。静かな余生を送るためにここに来たんです。思っていたとおり、地域の人々とのやり取りがあって、関わりの中で生活していけていると感じます。海と夕陽を眺めながら、ゆっくりコーヒーを飲んで、ぽけっとして過ごしたい。これからも、自然の中で遊んで暮らしたいです。」

きらきらと光る笑顔で、理想の未来を語ってくれた亜紀子さん。

自らの手で染めたという藍色のワンピースに身を包んだ彼女自身が、穏やかな海のようだった。

(文・写真 すずきまき)

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