鶴岡市に移住した人々の日常を、リアルな体験談とともに紹介する“鶴岡市移住インタビュー”。鶴岡市の三瀬地区へ移住し、今は鶴岡市三瀬地区自治会の事務局長として地域の魅力発信や移住者の受け入れなどをされている竹内秀一さんにお話しを伺いました。
プロフィール
竹内 秀一さん
山形県鶴岡市小岩川(旧 温海町)出身。1980年生まれ。
高校卒業まで地元庄内で過ごし、大学進学で福島県いわき市へ。卒業後、勤めた企業で宮城県や山形市など転勤で東北を転々とする。2008年に妻と子どもと共に家族で鶴岡市にUターン。2017年からは鶴岡市三瀬地区自治会の事務局長となり、現在に至る。
自然と共存するコンパクトな町
ー 鶴岡市三瀬地区は、440世帯ほどが暮らす日本海沿岸部の町。海も山も近くコンパクトで自然豊かな地域です。昭和30年代頃は林業が盛んでしたが、時代の流れと共に荒廃していました。その森林に手を入れて「ひゃくねん森」と名付けて自然に触れられる場を開き、森林保全の中で出てくる間伐材を薪として活用するなど、地域内のコミュニティと自治会が連携し合い、新しい地域の価値を生み出しています。
ー 三瀬の人たちは、わいわい集まって、様々な活動に取り組んだり、三瀬らしい魅力的なコンテンツを作り出している印象がありますね。
竹内さん
そうですね。地域の規模がそれなりにあるので、それぞれのコミュニティがありますね。ひゃくねん森の活動や夜光虫ウォッチング、自治会で行なう孟宗まつり、運動会など、それぞれのフィールドでグループを作って、グループごとに融通しあったり、それぞれの円が重なるところがたくさんあるので、そういうところがいいなと思います。
ー コミュニティがつながる土台はどこにあると思いますか?
竹内さん
みんな誘い合うところですかね。飲み会の場があったり、そういうところは大きいんじゃないかなと思います。反省会や懇親会で話して、それぞれのコミュニティに誘い合ったり。「ここが不安なんだ」とか「ここを直したい」とか話して「じゃあそこを直そうか」って人が動いたり、言い出しっぺが動けるように、みんなで盛り上げるというかサポートしたり。そういうのがうまく回っているんじゃないかなと思いますね。
森と人の心地よいバランスを探して
ー 間伐材を使った薪の利活用事業はどうやって始まったのですか?
竹内さん
地域の方々の中で、山を活用ができないかと色々な研修会に行ったり、地域の資源を活用した再生可能エネルギーの導入を研究されている東北芸術工科大学の三浦 秀一教授をお迎えしてお話しを伺ったりして、ちいさな薪づくりを考える会を作って動き出しました。
資金面では、使える補助金や関係部署の事業費などを利用しながら、徐々に活動が形になってきたというところです。
地域の薪材を使って、バイオマス発電の熱エネルギーを地域で使うというサイクルができていけばいいなと思います。
ー 薪を利用してエネルギーを地域内で自給自足することで、荒廃した森林環境整備と地域内の経済循環を作ることができる「木質バイオマスの活用」。三瀬地区の保育園やコミュニティセンターには、薪ストーブや薪ボイラーが導入され、地域内でのエネルギー循環を作り出しています。地域の特性を生かしながら、雇用創出や人口増加や活性化など地域が抱える課題解決につながるのではないかと各地から注目を集めています。
竹内さん
杉を植えたりしてある時点で人の手が入った山なので、手をかけないとどんどん鬱蒼とした山になっていくだけなんですよね。自然への環境負荷を抑えることも必須ですが、山に人の手をかけることも必要で、バランスって大切だなって思います。
三瀬にとって八森山は杉とかの材をとる場所でしたし、エネルギーの山だったんです。それにスキー場のある場所は一定期間管理されてきたので原野ではない特別な山です。植物や生き物の種類がすごくて、生物多様性の場所になっています。草刈などの労力はかかるんですが、保育園の子どもたちが遊んだりできるとても良い場所です。
自然と暮らす移住のあり方
ー 自治会ではどのような仕事をしていますか?
竹内さん
広報的な部分では、それぞれの団体の活動を住民や地域外にも広報したり、他の地域で三瀬のお話しをしたりしています。あとは、三瀬コミュニティセンターの維持管理や事務作業、市の行政連絡業務などをしています。
ー 自治会は三瀬の移住の受け入れの窓口になっているそうですね。
竹内さん
そうですね。ここ数年は、ちょうど空き家がなくて受け入れがない状況でしたが、問い合わせは年間2〜3件ぐらいはもらいますね。結婚などをきっかけに実家にUターンで帰ってきている人はいます。
移住の問い合わせをいただくことで、地域の方に声をかけて不良空き家の持ち主に問いかけができるようになるので、そこで関係性を構築していけたらいいなと思います。みんな無関心になるとどうでもよくなっちゃうので。
どうゆう情報に興味を持ってもらえるか模索中ですが、ホームページや公式LINEやSNSなど様々なメディアで三瀬の情報を発信にも力を入れています。
ー 三瀬へUIターンする方はどんな人が多いように感じますか?
竹内さん
やっぱり自然が好きな方が多いかなと思いますね。ひゃくねん森などの活動をみたりして、自分の暮らしの一部に自然があるというのを好まれる方ですね。年代は20代後半〜30代半とか子育てなどを考えるタイミングもあったりするのかもしれません。
地域と関わりながら、自分のペースで暮らせる場所
ー 鶴岡市の小岩川に生まれ、県外の暮らしを経て、三瀬に移住された竹内さん。Uターンの当事者としてのお話しも伺いました。
ー Uターンのきっかけを教えてください。
竹内さん
山形市で勤めていた仕事を退職したことがきっかけです。山形市内に残るか、地元に帰ってくるか、どちらかの選択だったので、じゃあゆっくりできる地元で暮らしたいということで帰ってきました。
ー Uターン後、良かったこと・困ったことはありましたか?
竹内さん
計画的に帰ってきたわけではなかったので、半年くらい職探しに難儀しました。前職がサービス業だったのですが、その職以外のスキルを持っているわけではなかったので時間がかかりました。その分、子どもを連れて児童館に行ったり、駅前の鶴岡市子育て広場 まんまルームにいったり。時間があるから家族で過ごす時間がたっぷりとれました。昼寝もめっちゃしましたし(笑)
ー 三瀬での暮らしはいかがですか?
竹内さん
山も海も近いし、スキー場があったり、子どもたちが遊びやすい砂浜もあって、いいなと思います。神社の方にも植物や生き物がいっぱいいますし、のびのびと子育てできると思います。
ー 竹内さんが思う三瀬の魅力は何ですか?
竹内さん
自分のペースが持てるというところかもしれません。地域の人同士うまく引っ張り合ったりしやすいっていうか。お願いしますって言うと、すぐ手伝ってもらえたりするコミュニティや関係性ができていて、うまく自分のペースが保てるのが大きいですね。規模感も程よいのもあるのかもしれません。
あとは、近所でクワガタとかカブトムシが取れるところですかね。夏になると子どもを連れて、散歩しながら捕まえてくるんですよ。
ー 三瀬に移住を検討中の人へアドバイスをお願いします!
竹内さん
やっぱりある程度地域のことを知ってからがいいと思います。対外的なイベントもあるので参加してみたり。三瀬の人たちは外からの人をすごく受け入れてくれるので、何か寄り合いに入ってみてもいいのかなって思います。
インタビュー後、通りを散策するとにぎやかな声が。「産直さんぜ」は、気軽に立ち寄れるお茶飲み場のようになっていて、県外の人も地元の人も当たり前に笑い合い、冗談を飛ばし合うその様子は、他者を受け入れる三瀬の空気感そのもののように感じました。
この記事を書いた人
大瀧香奈子
FUNE(デザイン室フネ)グラフィックデザイナー
鶴岡市(旧 櫛引町)の果樹農家に生まれる。デザインワークの傍ら、地域の食文化、美しい風景や受け継がれる伝統を再発見する日々。