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大好きな自然を追いかけ、人の縁に導かれてたどり着いた 今のわたしの現在地

鶴岡市に移住した人々の日常を、リアルな体験談とともに紹介する“鶴岡市移住インタビュー”。岩手県奥州市から自分の好きを追いかけて鶴岡に移住した髙橋夏音さんにお話しを伺いました。

プロフィール

髙橋 夏音なつねさん
 岩手県奥州市出身。山形大学(以下「山大」)への進学を機に山形県鶴岡市に出会う。一度は地元の奥州市に戻ったが、地域おこし協力隊として鶴岡に移住する。
 大山下池に隣接する都沢湿地を活動拠点にした施設、『鶴岡市自然学習交流館 ほとりあ』での活動に従事し、庄内自然博物園構想推進協議会の一員として自然や人と触れ合う日々を過ごしている。

ラムサール条約登録湿地の大山上池・下池では、日の出とともに池から飛び立つコハクチョウや様々な野鳥を見ることができる

ー自然学習交流推進員(地域おこし協力隊員)として活動している夏音さん。職場の鶴岡市自然学習交流館 ほとりあは、多様な生物が生息する都沢湿地、ラムサール条約登録湿地の大山上池・下池、森林浴の森100選に選ばれている高館山などの豊かな自然を活用し、子ども達をはじめ市民みんなが自然にふれあい、学習する場です。

わたしの「好き」を学べる場所が鶴岡だった

ー鶴岡との出会いはいつですか?

夏音さん
 高校3年生の進路を考えている時です。もともと動物系が好きだったこともあって、野生動物を研究している先生のところに進学したいと思っていたんです。それでいろいろな論文を読んでいて、自分が一番気になった研究をしていたのが山大の先生でした。

それで山大に進学することになり、1年は山形市のキャンパスで学び、2年目から鶴岡キャンパスに通うため、鶴岡市に引っ越してきました。

 特にクマに興味があって、研究したいと思っていたんですよね。クマって肉食のイメージじゃないですか。でも本当は草食よりの雑食で。時期によってはアリしか食べない時期もあったり、なかなか面白いんですよ。

大学時代のサークル活動で山菜採り

ー 地域おこし協力隊として移住するきっかけは何だったんですか?

夏音さん
 在学中、コロナ禍が重なって大学が閉鎖になってしまい、行く場所もないし、何をしたらいいんだろうって気持ちが落ち込んで、こもりがちな生活になってしまって。大学4年の本当に最後の方で休学して(のち退学)岩手の奥州市に戻ることになったんです。

そんな時、学生の時にアルバイトしていたほとりあの方に、ほとりあの施設に入る形の地域おこし協力隊募集のことを紹介してもらって。その時は1回岩手に戻ってたので、ちょうど協力隊の条件にも当てはまるなって。

 好きなフィールドの近くで、自分が新たにやりたいことを探すきっかけにもなるかなっていうのと、学生時代にアルバイトをしていたほとりあの方や居酒屋の店長さんとか、鶴岡で仲良くなった方々がいたので、この地域でできることがあれば少しでも力になれたらいいなと、2022年5月に着任することになりました。

ほとりあのスタッフとしてワークショップの進行をする夏音さん(夏音さん提供)

ーほとりあでは、どんな活動をしていますか?

夏音さん
 私が担当している主な仕事は、湿地の保全や資源の利活用です。ほとりあ周辺の都沢湿地には背の高いマコモやヨシっていうイネ科の植物があるんですけど、これらばかりが増えすぎちゃうと、水面が覆いつくされて小さい植物が育たないんです。

 そこで、定期的にマコモやヨシの刈り取りを行っています。私は刈り取ったマコモの新たな活用として、マコモを粉末にして食品としての利用の幅を広げる取り組みを行いました。マコモは、ビタミンや葉酸が豊富で食材としての高いポテンシャルがあるので、これまで湿地に興味の無かった方々にも都沢湿地の魅力を知ってもらって、訪れていただくきっかけを作りたいと考えているんです。

 あとは、ほとりあの作業員さんたちと一緒に草刈りをしたり、夏は湿地の生き物を捕まえて調べたりするイベントをやらせてもらったり、直近では竹灯りづくりとかのイベントも担当しています。

ほとりあのすぐそばの湿地では点々と置かれた「ヨシボッチ」は、春に火入れをするために刈られたヨシをまとめたもの
湿地では罠を使ってアメリカザリガニ(以下ザリガニ)やウシガエルなどの外来生物駆除の活動もされているそうで「胃の中を見て食性を調べて記録したりしています。」と夏音さん
夏音さんが開発を担当したマコモは粉末やせんべいなどに、外来生物として駆除されたザリガニなども商品展開されている

ー鶴岡に移住して印象に残っていることは?

夏音さん
 初めて鶴岡に来たのが大学の時だったんですが、私は岩手県奥州市出身なので、同じ東北だから冬も何とかなるだろうという気持ちでいたんですけど、全然冬の質が違いました。(笑)

奥州市は、音もなくしんしんと軽い雪が積もるので、雪をよけるプッシャーで簡単によけられるんです。除雪車が通った後に残った雪もさーっと片付けられる感じだったんですけど、鶴岡の雪はずっしり重くて、除雪の後にガチガチに固められた雪の塊が置いていかれるんで。あと風がすごいですね。

 真冬は地吹雪で真っ白な世界になることも


 2度目の移住では自分で車も持ったので、いろんなところを食べ歩いたりして、鶴岡はおいしいものが尽きないです。あと、地域でずっと愛されている店が多いのかなと。飲み屋さんに一人で行っても会話にまぜてもらったり、そういう人と人とのつながりの強さを感じます。

ー移住前の地域の情報収集はどうされましたか?

夏音さん
 大学進学の時は、移住者の声とかではなく、観光地としてどんな感じなんだろうと観光雑誌から入っていった記憶があります。ことりっぷとか、るるぶやまっぷるみたいな。

住まいは学校からの紹介やスーモなどの賃貸情報の中からいくつか候補を選んで内覧して決めました。

ーIターンして良かったこと・困ったことはありますか?

夏音さん
 もともと学生の頃のつながりがあったので、孤独ということがなかったのが良かったです。土地勘もあるし。

学生時代はコロナ禍で、孤独感から沈んでしまったこともあるので、今回は知り合いがいるところからスタートできて、より安心して暮らし始めることができたのは結構大きいかなと思います。

 でも、新しいつながりを作るのはちょっと大変かな。同世代だと山大生がメインになってしまうというか。どうにか新しいつながりを作ろうと、一昨年は「ディスカバつるおか」イベントに参加したり。でもなかなかそういう機会を自分で見つけるのはちょっと大変ですね。

「ヒトを知って、鶴岡を再発見する」をテーマにしたトーク&交流会「ディスカバつるおか」は毎年年末に開催されている

ー鶴岡の好きな場所・こと・モノは何ですか?

夏音さん
 私は風景と一緒にぬいぐるみやドールを撮るタイプの人間なんですけど、ぬいぐるみと一緒に撮りたい良い景色がいっぱいあってとても楽しいです。高館山や八森山、月山とかゆっくりですけど登山したり。あとは、夏場に大鳥とか川に石拾いに行ったりとかもします。石拾い楽しいですよ。

 湯野浜とか浜辺にもよく行きます。石とかもそうなんですけど、漂流物とかものを拾うのが結構好きなので。あとは、浜辺で波の音に紛れてストレス発散に叫んだり。「キャベツたかーい!」とか。(笑)  大声を出すとスッキリするんです。全部波がもみ消してくれる感じがして。

(左)月山登山 (右) ドル活 まるで森の妖精のようなドールちゃんの一枚

ーお仕事やプライベートで、これからやってみたいことはありますか?

夏音さん
  個人的なところだと、去年は月山に登ったので、今年は鳥海山に登ってみたいです。新しい発見ができるように楽しみたいですね。

 あとは、地域おこし協力隊の任期満了後もほとりあで継続して雇用していただけることになったので、職場の近くの地域に引越しできたらと思っています。まだあまり大山周辺を知らないので、近くにいればもっと知る機会も増えるんじゃないかなと。大山の新酒まつりで呑んでも歩いて帰れますしね。

 ほとりあの活動としては、人と自然をつなげていけるような活動をしたいと思っています。人の手が入った場所は、手をかけないと維持することができないんです。人の手が入ったところにも希少なものが結構あったりするので、そういうものを残せるように活動していきたいと思っています。

サービス精神たっぷりの夏音さん、たくさんのお話をありがとうございました!

ー「鶴岡には価値あるものがたくさんある」そう再確認する機会となりました。自然を守りながらも、違う視点で見つめれば、いらないものが宝になる。ここからまた新たな発想が生まれてくる予感、今後の活動に期待しています。

この記事を書いた人

大瀧香奈子
FUNE(デザイン室フネ)グラフィックデザイナー

鶴岡市(旧 櫛引町)の果樹農家に生まれる。デザインワークの傍ら、地域の食文化、美しい風景や受け継がれる伝統を再発見する日々。

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