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No49.【30年の大阪暮らしからUIターン。四季の移り変わり感じる暮らしを実現】

2020年1月にご夫婦で鶴岡市に移住したクリストファー・ケイさんと、ケイ 瑞穂さん。

大阪での都会暮らしから一転、田舎暮らしを選んだお二人は鶴岡での日々をどのように感じているのでしょうか。

プロフィール

クリストファー・ケイさん(以下、クリスさん)

1966年、オーストラリアのシドニーに生まれる。元々神秘的だと感じていたアジアに興味を持ち、23歳で来日。英会話スクールの先生などの仕事をしながら大阪で30年間暮らしたのちに鶴岡市にIターン。

ケイ・瑞穂さん(以下、瑞穂さん)

鶴岡市で生まれ、父親の転勤で東京・九州・大阪での暮らしを経験。

幼い頃から夏休みにはおばあちゃんに会いに、毎年のように鶴岡を訪れていた。

引っ越しを考えたときに、親戚のいる鶴岡に住もうとUターン移住を決意。

都会暮らしに違和感。こころのどこかで移住先を探していた。

長年暮らしてきた大阪からの移住を考えるようになったのは、人の多さと喧騒にストレスに感じるようになったことがきっかけだった。

瑞穂さん

5年くらい前から、毎日の生活にすごく疲れるようになっていました。人の多さ、街を歩くと歩きスマホの人ばかりで、地下鉄に乗っても皆、スマホを触っていて。住んでいたマンションの近くには総合病院があって救急車の音が昼夜問わず聴こえてきました。それに加えてパトカーの音も。そうした環境の中で暮らしていると、次第に仕事なのか、生活によるものなのか、原因のわからない疲れが溜まっていって…。このままではいけないなと思うようになりました。」

もともと鶴岡で生まれた瑞穂さん、そして、オーストラリアの広大な自然の中で育ったクリスさん。もっと自然を身近に感じられる場所に移住しようと決意する。

「ほどよい田舎」の鶴岡市

移住を思い立ってから、断捨離や資格取得など、ゆっくり準備をしながら移住先を探した。はじめは西日本にこだわっていたが、移住の先輩から絶対に親戚がいる場所のほうがいいよ!とアドバイスを受けたことを機に、移住先を鶴岡に決めた。

瑞穂さん

全く知らない場所よりは、親戚がいる鶴岡市にしようと思いました。実際に移住した日、真冬の引っ越しで到着が夜だったので辺りは真っ暗。事前に、買っておいたストーブと冬用布団を親戚に頼んで家に入れてもらい、電気のブレーカーも上げてもらいました。へっとへとで寒い中到着しても、灯油を入れてもらっていたのでとても助かりましたちっちゃいことなんですけど、すごく大事でした。」

クリスさん

「もうひとつ決め手になったのは、人口の規模です。移住にあたり、人口密度や、程よい人口はどのくらいかということを、事前に調べていたのですが、鶴岡市は人口規模の面でフィット感がありました。10万人を越えたらショッピングモールやドラックストアなど、色んな施設が整ってくる。自然が身近にある暮らしをしたいと言っても、森の中にぽつんと1軒だけ家があるような暮らしは、実際には何か技術を持っていないと難しいと思います。一般人にはなかなか出来ない。鶴岡市は自分がちょうどよいと感じる人口の規模にあてはまっていました。」

実際に暮らしてみて、人との距離感や町内会など地域のコミュニティも心地よく、大きな病院があり医療に不安がないことも暮らしやすいポイントだという。

引っ越しは「仕事」と「家」を決めてから。

瑞穂さんは大阪のハローワークで仕事を探し、東京第一ホテル鶴岡の 求人を見つけた。内定をもらい、無事仕事が決まった後は、家探し。大阪と鶴岡、夜行バスで12時間の道のりを何度も往復して準備を進めた。

瑞穂さん

仕事と家を決めてから移住しなければと思っていました。大阪ではずっとホテルの仕事をしていたので、鶴岡でもまずはホテルなら入りやすいと思い、東京第一ホテル鶴岡の求人に応募しました。クリスは大阪では英会話の先生をしていて、個人事業主だったので、まずは私がパートでどこかに勤めようと思いました。そうでないと家が借りられなかったので、まずは仕事。仕事が決まれば家の契約ができるなと思いました。」

「空き家バンクなども見ましたが、猫を飼っていたので、物件を探すのが大変でした。

都会では当たり前でも、鶴岡ではペット可の賃貸物件はとても少なかったです。」

瑞穂さん

「市役所の地域振興課に相談へ行ったり、移住前の半年間、2〜3週に一度は大阪と鶴岡を往復したので予想外の交通費がかかりました。その出費は痛かったです。今後は、テレワークで画面上でのやり取りも増えていくのかもしれないですね。」

クリスさん

「やっぱり、引っ越しの費用は安くはなかったです。想定外のいろんな費用が積み重なり、結局予算オーバーになってしまいました。」

引っ越しにまつわるリアルな声。今後移住をする方にも、ある程度貯金はしておいたほうが良いとアドバイスをくれた。

実際に移住してよかったこと・困ったこと。

クリスさん

「鶴岡に来てはじめの頃は、夜の静けさにびっくりしたことを覚えています。最初は静けさがうるさい?くらいで。なんか違う!…あ、静かなんだ!という感じで。今は普通になっていますが静かすぎて戸惑ったくらいです。電気を消した途端に視界が真っ暗になって、綺麗な星を見て感動しました。これが日常になったと思うと、とても嬉しかったです。」

「それに、ここでは本当に四季を感じます。田植えの時期には、田んぼの色が緑に変わって、土の匂いがして、秋の稲刈り後はすこし寂しくなるけど、冬にはまた雪で白くなる。これまで知らなかった季節の色を見ました。」

瑞穂さん

「ここに来てから、鳥の声が季節によって違うことに気づけました。『カッコー』に、『ホーホケキョ』も、それぞれうまい子とへたな子がいて、朝の4時からはやめて欲しいな…なんて思いながらも、毎朝聴くのがとても楽しいです。」

ユネスコ食文化創造都市でもある鶴岡市。食に関しても新たな発見があったという。

日本有数の穀倉地帯である庄内平野。稲刈りの時期には黄金色の絨毯のよう

瑞穂さん

「関西の出汁文化に慣れているので、こっちの醤油はちょっと濃く感じるかな。鶴岡では、野菜・魚・果物が沢山おすそわけでもらえますね。これまではないことだったのでびっくりしました。東北の味は大阪ではなかなか味わえないので、もっと関西でも食べられるようになってほしいです。」

クリスさん

「こっちの食材は新鮮です。大阪の頃スーパーで買った野菜は腐るのも早かったけど、鶴岡の野菜は長持ちです。新鮮さの差が絶対にある。これは自信があります。」

普段の生活にも、この土地ならではの良さがある。

瑞穂さん

「移住後は1ヶ月契約のレンタカーを借りて買い物に行ったり、この道はどこに繋がるのだろうとずっとうろうろしていました。そこから中古の自動車を購入したのですが、仕事で疲れた時にも、田舎道を走るとスッキリします。大阪ではほとんど地下鉄での移動だったので感覚が全然違いますね。」

クリスさん

「大阪で私たちが住んでいた地域には、日本一長い商店街がありました。10年前までは地元の人の店が並んでいたのですが、観光客が増えたことで、ほとんどがお土産屋さんや薬局になって、地元の人の店はほとんど無くなりました。鶴岡にはまだまだ地元ならではの個人商店も残っていて風情がありますね。」

瑞穂さん

困ったことはやっぱり言葉ですね。鶴岡で生まれているので庄内弁はわかるけど、喋ることは出来ない、関西弁が抜けないので、いくらUターンと言っても、関西弁だとよその人として扱われてしまうことはあります。」

クリスさん

「庄内弁は全然わからないです。若い世代は、お店に入っても、銀行や郵便局でもみんな標準語で喋っているけど、妻の親戚と話す時には通訳が必要ですね(笑)

それと、みんなが思っているより地方の生活をするのは安くない。ガソリン、食料品の物価、家賃などは都会とそこまで変わらない。」

瑞穂さん

「それなのに、時給は安いので生活費を稼ぐために普段の生活が忙しくなってしまいました。」

クリスさん

あまり忙しくなると、越して来た意味がない。タイムとマネーのバランスを考えなければいけないですね。ここに来て1年半経つので、生活プランを改善していきたいです。」

日本の地方の良さを紹介したい

大阪時代から英会話の先生をしていたクリスさん。日本の生徒たちをオーストラリアに連れて行ったこともある。

「当時は、国同士を紹介するツアーは殆どありませんでした。だから自分がガイドになって、オーストラリアと日本の橋渡しをしようと思いました。今後は、オーストラリアの人を山形に連れて来たいと思っています。日本といえば、まだ、都会のネオンや電化製品のイメージが強いので、2・3日都会から出てデジタルデトックスしたい方に、私たちが庄内の、特に鶴岡のような自然な地方の良さを紹介して、心身ともにリフレッシュしてもらえばと思っています。また、ちょっと日本に興味ある、住んでみたいという外国人を受け入れる場所を作りたいです。構想はまだまだあるけれど、ステップバイステップで実現していきたいですね。」

(鶴岡市の初夏の風景)

現在はスイデンテラス で働く傍ら、英会話のキッズレッスンをしている。英会話のレッスンはSNS等ではなく、チラシをポスティングすることで集客した。昔からのスタイルを変えず、アナログ にこだわるクリスさん。そこには、彼らしい考え方が垣間見える。

「私たちはそこまでネットで情報を得るということはしません。ある程度は調べるのですが、自分たちが行って直接コミュニケーションをとりながら情報を集めるアナログな方法がいいと思っています。私だけの感覚かもしれないけど、全て把握しておくことは好みません。全て調べて、全て把握していると感動が薄くなるかもしれないからです。知らなかったことを知った時の驚きや感動を大切にしたいです。

心のマッサージ屋さんを開きたい

瑞穂さんは、移住前にメンタルケア心理士の資格を取得。今後、鶴岡で開業したいという想いがある。

瑞穂さん

心のマッサージ屋さんという形の、誰でも、気楽に愚痴を言えて、カウンセリングを受けられるような場所を作りたい。」

仕事以外にも、まだまだ、楽しみなことが。

瑞穂さん

「海が好きだから、海の近くに引っ越せたら良いなと思っています。コロナ禍で、外食のディナーをまだ2回くらいしかしていないので、落ち着いたら行ってみたい。最近またすこし、ふたりとも忙しく働きすぎてしまっているので、ストレスを溜めないようにバランスとっていきたいです。」

鶴岡は自然に溢れる美しい土地だ。それでも、毎日が忙しすぎてはその美しさにも気づけない。アナログなことやライフワークバランスを大切にする、ケイ夫妻の素敵な価値観を見習いたい。

(文・写真 すずきまき)


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