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№.57 憧れを追い求めてたどり着いた日本のイタリア

鶴岡市に移住した人々の日常を、リアルな体験談とともに紹介する“鶴岡市移住インタビュー”。杜の都・宮城県仙台市から食の都庄内・鶴岡に移住し、イタリアンレストランで修行の日々を過ごしている菊地康子さんにお話を伺います。

プロフィール

菊地 康子(きくちやすこ)さん
宮城県仙台市出身。1973年生まれ。
仙台市で洋菓子店に勤務。2020年10月、鶴岡に移住し、奥田政行シェフが経営するアル・ケッチァーノ本店入社を経て、現在は鶴岡駅前の系列店ファリナモーレ・ドルチェの店長と菓子製造業務を兼任。日々イタリアン修行に没頭している。

私にとって、鶴岡は食の「聖地」なんです。

ー ゆかりのなかった鶴岡へIターンされた菊地さん。移住のきっかけを伺ってもよろしいですか。

菊地さん
私はすごく食に興味があって、もともと洋菓子の仕事をしていました。また、イタリアンがとても好きなので、いつかイタリアンのお店を持ちたいという夢があり、前職を退職後イタリアへの料理留学の計画をしていたんですが、新型コロナの影響で中止を余儀なくされました。

そんな時、東北ゆかりのゲストを迎えるトーク番組に「アル・ケッチァーノ」の奥田シェフが出演されることを知り、その公開収録を観覧したのが大きなきっかけです。

以前、本で読んでいた通りの素晴らしい方で、生産者さんに対する思いや利他の精神が、自分が考える理想と同じですごく感動しました。

その直後に紹介されていた別職種の面接を受け、「仕事に対しての思い」を提出する事に。迷いながら書いた原稿用紙には、「食に関わる仕事がしたい」という自分の答えが全部書いてあって。気がついたら「鶴岡移住」と検索していたんですよね。奥田シェフに憧れていたので、私にとって、鶴岡は聖地だったんです。シェフの原点である鶴岡には、どんな魅力があるんだろうって。

ファリナモーレ店内に飾られている、菊地さん憧れの奥田シェフの写真

ー 移住を考えはじめてから、どれくらいで鶴岡に転入されましたか。

菊地さん
2020年9月の上旬に番組観覧して、その数日後には鶴岡市の移住コーディネーターにコンタクトを取っていたと思います。ゼロスタートの状態で相談に乗っていただいて。住まいから、飲食系の仕事の情報なども提供していただきました。

そんな中、山形市内に新しくオープンするアル・ケッチァーノの新店舗の求人を見つけて。すぐに面接していただき、私の思いをお話ししたら希望が叶い、2020年11月から鶴岡市の本店に正社員として勤務することが決まりました。

ー 準備期間2ヶ月ほどで鶴岡に転入されたんですね。不安はありませんでしたか。

菊地さん
私は性格的に何とかなる精神のところがあって。東日本大震災も経験しているので、何とかするしかないと考えるタイプなんです。ただ、来てみないとわからないこともあるので、これから移住を考えている方は何度か足を運ばれるとイメージがつきやすいと思います。

テキパキと何でも軽やかにこなす菊地さん

鶴岡の豊かな食と自然に魅了されて。

ー 鶴岡に移住して、良かったことはありますか。

菊地さん
食べ物がおいしいですね、本当に。鶴岡市はユネスコ食文化創造都市に指定されていて、鶴岡を目指して全国各地から人が集まるのが納得できますし、自分でも実感しています。

あとは、春夏秋冬がはっきりしているなと。春は鶴岡公園の桜が見事で、夏は赤川花火が圧巻です。実りの秋は米どころの新米が味わえたり。冬は冬景色。この厳しい寒さを越すからこそ、春がとても待ち遠しく感じられる。来てよかったなって思いますね。

ー 食材はどこで購入していますか。

菊地さん
産直に行くのが楽しくて。葉物だったら「しゃきっと」さん。果物だったら「あぐり」さん。山菜やきのこだったら「あさひ・グー」さんや「あねちゃの店」さん。「もんとあ~る」さんも品揃えが結構あって楽しいですね。安くて新鮮でこんなものがあるんだっていう。

ー 食材別に、産直を使い分けているとはさすがですね。

菊地さん
鶴岡には都会では味わえない新鮮さがあります。春だと孟宗筍。こちらでは、孟宗を新鮮なうちに茹でるので、アクを抜く糠とか使わないんですよね。地元の方の孟宗愛を感じます。

ヘルプにも入るアルケッチァーノのメニューは、在来野菜や近海の魚など庄内の食材が並ぶ

雪国ならではの困りごとあれこれ。

ー 鶴岡に住んでいて、困ったことなどはありますか。今後移住を考えている方にアドバイスをください。

菊地さん
今はバスや自転車を利用していますが、最終バスの時間が早くて、タクシーも電話で呼ばないと来てくれないことを知りました。自動車免許はあったほうがいいですね。

あとは冬の光熱費が高いので、暖房は灯油ストーブとエアコンを使い分けています。

それから冬の水道凍結。去年は1回凍結しました。凍結防止の水抜きのやり方も教わったのですが、頻繁に使わないので・・・なんとか復活しましたが大変でした。

ー宮城の冬と鶴岡の冬にギャップはありますか。

菊地さん
駐車場や道路に消雪があるのにびっくりしました。もう慣れましたが、除雪車の音が朝の5時くらいに聞こえてきます。雷や風の音はいまだに慣れないですね。

ハートのかたちがロマンティックなフランボワーズとピスタチオのケーキ

休日も「美味しい」がいつもそばにある暮らし。

ー 鶴岡の好きなところや休日の過ごし方を教えてください。

菊地さん
お魚が美味しい鼠ヶ関が好きですね。鶴岡では約140種類の魚がとれるそうで、加茂水族館でも庄内浜のお魚の展示があって、そういうのを見るのが好きです。
それと庄内観光物産館に入っている2つの魚屋さん。同じ庄内でも南北で獲れる魚に違いがあって、お店ごとに取り扱う内容が違ったりするので、面白いです。

仕事以外でも、在来作物の種まきや収穫をしたり、生産者さんのところに行ったりもします。

(左上)藤沢カブ生産者さんと早朝の種まき (右上)奥田シェフと藤沢カブの収穫
(左下)ファリナモーレでぎんざの夏まつりに出店 (右下)月山高原鈴木農園でブルーベリー狩り

ー 夜の過ごし方はいかがでしょうか。

菊地さん
お店の食べ歩きをしたりしています。お酒も好きですね。お店のご近所さんやお客様とも仲良くなって、情報交換をしたり、一緒に食事に行ったり、コンサートに行ったり。お客様とお話しするのが好きなんですよね。また、お店のスタッフやシェフとみんなでカラオケに行ったりすることもあります。

菊地さんが大切にしている奥田シェフの本には、シェフからの熱いメッセージが

ー これからの目標や鶴岡でやりたいことを教えてください。

菊地さん
「いつか自分のお店を持ちたい」という夢のために、常に今やっていることですが、レストランでの接客はもちろんだし、お菓子も料理も作りたいし、自分で何でもできるようになりたいなと思ってますね。

全国各地から夢を持って集まった仲間たちと奥田シェフを囲んで

夢を追いかけ、自分の「好き」にまっすぐな菊地さんの笑顔にエールを送りたいと思います。

この記事を書いた人

大瀧香奈子
FUNE(デザイン室フネ)グラフィックデザイナー

鶴岡市(旧 櫛引町)の果樹農家に生まれる。デザインワークの傍ら、地域の食文化、美しい風景や受け継がれる伝統を再発見する日々。

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