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No.30 港港にある漁業社会に認めてもらうことが大切

今回のインタビューは2008(平成20)年に愛知県岡崎市からUターンし、漁業を始めた佐々木学さん(32歳)にお話を伺いました。

佐々木さんは、鶴岡市湯温海のご出身。地元の水産高校を卒業後、一度は漁師として隣県の底引き網漁船に乗りましたが、結婚を機に愛知県岡崎市に移住し、自動車関連の工場に勤めました。

( 写真提供:佐々木学さん )

Uターンするきっかけは?

佐々木さん:愛知県岡崎市は、妻が短大時代に過ごした場所でもあったので、妻はまだいたかったようですが、彼女の妊娠をきっかけに、知らない土地だったし保育園や子育てを考えたときに不安もあったので、私から帰ろうと言い、子供が生まれる前に帰ってきました。

漁師をまたやろうと思ったきっかけは?

佐々木さん:帰ってきたものの、仕事はどこもなくて、そんな時にもう一度船に乗ってみようと思ったのですが、船を買う資金もなく、漁といっても何をやりたいのか自分の中で決まっていませんでした。そこで、はえ縄漁の漁師をしていた地元の先輩にお願いをして船に乗せてもらい、半年ほどはえ縄漁のノウハウを学びました。そこがスタートでした。

実際に漁師をはじめるにはどうしたのでしょうか?

佐々木さん:やはり漁業をやりたいと思い、漁業協同組合に相談したところ、ちょうど鶴岡市の漁業後継者育成事業(山形県緊急雇用創出事業臨時特例基金事業業務委託)の募集があるというので、それに申請し、1年間研修しました。ちょうど1期生だったと思います。育成事業の中で、はえ縄漁をしようと気持ちが決まったので、この事業はありがたかったです。自分は船舶免許も無線の免許もなかったので、見習い期間中に取得しました。

( 写真提供:佐々木学さん )

漁師は大変そうなイメージですが実際どうですか?

佐々木さん:漁師はなるまでが一番大変だと思います。漁業後継者育成事業で1年経ったら、もう一人立ちしなくてはならないのです。船が出港するのは夜なので、一人だともう不安ですよ。でも「やめときゃよかった」というのはなかったですね。「どうしよう」っていうのは常にあります。最初のうちは、天気を見ても、出られるか出られないかわからないですし、捕る魚も大体は時期で決まっているのですが、その中間期の1~2か月は、何を捕ればいいのかわからないんです。

港港には漁業社会というのがあって、そこの人達に認めてもらわないといけません。それが一番大変ですよね。同じはえ縄漁だったらその港にも他にやっている方が居るわけじゃないですか。育成事業の見習いの時に一生懸命通って徐々に自分を覚えてもらい、知り合いや繋がりをつくることが大切です。

( 写真提供:佐々木学さん )

漁師になってどう感じていますか?

佐々木さん:よかったと思っています。やった分成果がでるのが一番です。工場勤務の場合、ノルマなどありますが、それを当たり前にこなしてしまうと、次はこれもできるだろうと要求されることが増えりじゃないですか。でも給料は変わらない。反対に、何か失敗をしたときに反省しているのに、上司からまたさらに言われるのが自分は嫌でした。漁師って、頑張れば頑張った分成果が見えるし、失敗しても、まだ自分でやり直せるので、普通の会社勤めよりやりがいあると感じています。

佐々木さん:一人で全部やるので、恐い思いもしたことありました。肩の脱臼癖があり、丁度マグロを捕っているときに外れてしまし、左腕一本で釣り上げて、その後、自分で船の上で外れた肩をはめました。それが一番大変でした。釣り針が刺さることはしょっちゅうです。3~4年前、手術しなくてはいけなくなり、手術とリハビリで半年位漁を休んでいましたが、その時はもう漁師を辞めようと思いましたけど(笑)今は大丈夫です。

( 写真提供:佐々木学さん )

日本海の冬は時化(しけ)が多いようですが冬はどうするのですか?

佐々木さん:時化が続くと2週間~3週間家にいることもあります。そのときは、はえ縄を作ったり直したりします。実はそれが一番大変なんです。全部自分でするんですよね。冬は漁に出るより、基本はそっちの方の時間がほとんどですね。今年はちょうど子供が生まれたので時化のときも忙しく過ごしました。

漁以外は何をして楽しみますか?

佐々木さん:釣りです。皆から笑われるんですが、船を出せない時とか普通に陸からスズキとか釣ります。船での釣りは、仕事なんですよね(笑)船に乗っちゃうと、それはもう仕事という感じになってしまいます。でも仕事から早く帰れる時は、その後に普通に釣りに出かけます。あの感覚がいいのです。普通にゲームみたいな感じで楽しんでいます。

新規漁業を目指す人へのアドバイスがあれば教えてください。

佐々木さん:漁業といってもどんな種類の漁をするかによって地域を選ばないと、具体的に話が進まないと思います。そしてその地域に住まいを移さないといけないので、そういう点で皆さん多分苦労していると思います。その地域の人に受け入れてもらい、地域の人と関わってそこから繋がることが大切です。また漁業後継者育成事業などの枠があるかどうかですよね。そういったサポートがないと、船を買ったりできないので。自分の場合、運よく解体するという船を手に入れることができたんです。船は魚探装備とか、はえ縄漁の道具を揃えるのに結構お金がかかります。漁の方法の仕方で、全然装備が違ってくるんです。そして、やはり実際に漁を体験してみることです。

(平成30年3月29日 インタビュー)

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