鶴岡市に移住した人々の日常を、リアルな体験談とともに紹介する“鶴岡市移住インタビュー”。今回はシェアハウス&キッチン「こがたん。」(以下「こがたん。」)に遊びにきたことをきっかけに、秋田からIターンした武井さんの鶴岡移住4年目の暮らし方、働き方についてお話をお伺いしました。
プロフィール
武井 真笑さん
1994年 秋田県秋田市出身。東海大学観光学部観光学科を卒業後、秋田へUターン。カーディーラーの営業職を経験したのち、2021年に「こがたん。」への居住をきっかけに「株式会社株式会社LOCAL RESORTS」へ転職。現在はショウナイホテルスイデンテラス・レセプションにてリーダー職をつとめている。
―武井さんは秋田出身ということですが元々地方に興味があったんですか?
武井さん
ありましたね。高校時代に部活動で駅伝をやっていて、東北大会で東北を周るんですよ。私の高校は1年生は大船渡、2年生が山形で3年生は秋田で。知らなかった地方を周って、美味しい食べ物を食べて、応援してもらったということがすごくうれしくて。
そこで地方に興味を持ちました。関東への遠征も多かったのと、やりたいことを応援してくれる家庭で育ったので、一度秋田を出てみよう思い、高校卒業後は県外の大学に進学しました。
大学は東北ではなく関東に行ったんですか?
武井さん
はい。観光について学べる大学を選びました。1、2年生は神奈川県湘南市にキャンパスがあって、観光学部だけ3年生から代々木のキャンパスに行くんですけど、その時も拠点は湘南に置いたまま電車で1時間かけて通っていました。
就職活動は、関東の企業も何社か受けたのですが、満員電車の通勤がイヤで。好きな音楽を聴いて車でのんびり通勤するイメージだったのと、やはり地方に関心があったので東北に戻ることが私の定めかなと思いました。
卒業後は秋田に戻られて、どんな仕事をしていたんですか?
武井さん
トヨタのディーラーで営業していて、担当1人当たり400人のお客様を抱えていました。地方は車社会なので、生活にとって車は必需品です。そこで地域の方と密に接することで「秋田(地方)で働いている」という実感はかなりありましたね。
鶴岡が気になるきっかけになったことはなんですか?
武井さん
「移住スカウトサービスSMOUT」を何気なく見ていた時に、“住む”のカテゴリーに「こがたん。」があったんですね。「すごい綺麗じゃん!」って思って、『いいね』ボタンを押しただけなんですけど、私宛に「秋田なんですね遊びに来ないですか?」とメッセージをいただいて。それが定型文ではなかったことが、「こがたん。」を気になるきっかけになりました。
それはうれしいですね、「こがたん。」からスカウト!
武井さん
最初から移住を考えていた訳ではなくて、鶴岡は秋田から近いけれど、どういうところかわからないので軽い気持ちで「こがたん。」に遊びに行ってみたんです。
当日は、OGの宍戸さん(移住者インタビュー№47)から隣の地域の三瀬の卵を使った分厚い卵焼きとお野菜をはさんだ“たまごサンド”をご馳走していただいて、海を見ながらお話したんです。それで、自然とまた来たいって思いました。お土産もアケビだったんですよ!初めて食べたのですが、甘くておいしいと思って。やられましたね(笑)。
行ってみたらすごく良いところだけど、今のお仕事どうしようと思って。そうしたら「こんな会社もあるよ。」と現職を勧めてもらいました。調べたら面白そうだったので、WEB説明会に参加したら面接まで進んで(笑)。WEB面接なので、秋田に居ながら面接ができました。
意思を持って移住したというよりは、流れに任せたら理想の形に近づいてきたんですね。
武井さん
元々、地域に関することに興味があったのがさらに明確化してきて、なので決心も自然と。最終面接で初めて会社に来て、代表と話したその日に採用の回答があったので、駐車場で「秋田に戻ったら(会社に)辞めるって言わないと」と思いました。
仕事が決まってから鶴岡に移住するまではどのくらいかかりましたか?
トータルで3ヶ月くらいです。就職が内定したのは12月初旬でした。前職のお客様や業務の引き継ぎがあったので3月31日まで秋田にいて、4月1日に鶴岡に来ました。
移住後はシェアハウス「こがたん。」に住んでいらしたとのことですが、住み心地はいかがでしたか?
武井さん
シェアハウスの住民自体が地域づくりに興味がある人が多いと思うんですけど、住みっぱなしというよりは地域のことについて活動する場をいただけるのでありがたかったです。
酒田市の東北公益文科大学のゼミ生も参加したり、地元の若い方も何人かいたので楽しかったですね。地域活動の一環で「火の用心」で集落を回る時があったんですが、私も恥ずかしながら大きい声出しながらやりました。そんなことも楽しかったですね(笑)
地域の方とアイデアを出して実現したことはありますか?
武井さん
地域の子どもと一緒にワークショップをする機会がたくさんありました。例えば「こがたん。」の駐車場にあった「穴」が危ないので埋めることになり、それなら海から拾ってきたシーグラスも一緒に埋めてかわいくしてみよう!とワークショップを開催することになり、私はチラシ作りを担当しました。それで自然と地域の繋がりもできて、子どもたちからは「まえちゃん鬼ごっこしよう!」と誘ってもらってたくさん一緒に遊びました。
今のお仕事はレセプションですが、地域に関わることはありますか?
武井さん
一番実感するのはフロントでお客様とお話する時です。庄内地域を訪れた方におすすめの場所や、よくある質問に答えられるようストックしていて、また来てもらえるようにアプローチをするということを意識しています。私自身も秋田から来て鶴岡のことをまだまだ知らないので、休みの日は1人であちこち周ったり、食べ歩いて、ここ美味しかった!っていうのは、スタッフにも共有しています。
Iターンまで短期間でスムーズに進んだ印象ですが、「こがたん。」での情報収集以外は何かありますか?
武井さん
初めて「こがたん。」を訪れた時に、移住コーディネーターの方から移住支援などのお話を聞いたことと、私自身、ひとつのご縁で「ここだ!」と思うと直観で動けるタイプなので特に情報収集はしなかったです。
普段のやりとりは「こがたん。」のオーナーがサポートしてくださいました。全部チャットなんですけど。あとは実際来てみて周りの方がサポートしてくださって、自分から取りに行くよりも、必要な情報をちゃんと親身になって与えてくれる人が多かったなと思います。来る時も迷わなかったし、来てからも悩んだことはなかったです。
秋田だと鶴岡と気候もそこまで大きく変わらないし、生活面でもギャップはそこまで無かったのかもしれないですね。
武井さん
ギャップは…あまりないですね。皆さん優しいなと思います。秋田は方言も「なんとかだべ」とか「だがら」とか強い印象ですが、鶴岡だと語尾を「のー」って言うじゃないですか!善寳寺に行った時も、地域のおばちゃんが石段を登っていて、全部「のー」だけで会話しているんですよ。そういうかわいい感じは秋田にない、その違いは感じていましたね。
会社も地域に密着していますし、補助金などの支援面も、移住の際にお世話になった鶴岡市から随時お話があったので情報をキャッチできたなと思いますね。困ったこと…なかったかもしれない!
移住してから鶴岡の「ここが好き!」というところはありますか。
武井さん
そうですね。第一に人が温かいというのは本当に思うんですけど、次にご飯がすごく美味しいです!秋田も美味しいじゃんって言われるんですが、庄内は街全体で食の素材を大切にしていると感じています。店員さんとお話すると、すごく自慢げにお話してくださるんですよ。あとは庄内平野すごいですねやっぱり。こんなに真っ直ぐな地平線が広がっているというのはあまり見ないです。
移住を検討されている方に移住前の心構えや、アドバイスできることはありますか?
武井さん
まずは、来て欲しいですね。地方は、パッと見ると似たりよったりに見えてしまうことがある中で、秋田出身の私でさえもこんなに違うと感じるので。
グッとくるポイントって、絶対どこの地域でもあるはずなんです。一番に、足を運んでもらうことが大事だと思っています。あとは周りの話を聞くと、移住支援を知らない人もいたので、情報を手に入れるかどうかで全然違うと思います。
これからやってみたいことがあれば教えてください。
武井さん
今は土日の仕事が多いので行けていないのですが、これからはイベントにも行きたいですね。
2、3年前は全国どこでも、例えば九州の地方に移住してもいいなと思っていたんです。ただ、その中でたまたま鶴岡になって。最近は、庄内・秋田あたりからは動かなくてもいいかなと心境に変化がありました。この地域が好きになったので、ここで外の人に何かを伝えたいと思っています。大学で観光を学んでいた時から、いろんな地域の良さを伝えるより、私は一つのところにいてその地域の魅力を伝えたいと思っていました。そこが昔からブレていなくて、いよいよ庄内あたりに定まったんだなっていう風に感じています。
武井さんの趣味は10年以上続けているスノーボード。鶴岡に移住してからさらに楽しくなり、今は技の習得に励んでいるそう。シーズン中は湯殿山スキー場のSNSを日々チェック!冬の暮らしも自分らしいペースで楽しんでいる姿、とっても「いいね」♪
この記事を書いた人
Harvest 本間聡美
山形県庄内町出身。進学、就職で10年以上仙台の暮らしを満喫し、庄内―仙台の2拠点生活などを経て2015年庄内にUターン。現在は鶴岡市を拠点に企業などの広告撮影、取材撮影、文章制作などを手がけている。