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No.24-後編 起業するなら東京より地方で!そして世界へ

稲川さんのインタビューの後編です。

稲川琢磨さんは2016年に東京都よりIターンし、洋食に合う日本酒を開発し国内外で展開する会社を立ち上げました。後編では実際に鶴岡に来てからの暮らしの様子を伺います。前編はこちらから・・

より鶴岡らしい環境で暮らすということ。

 稲川さん:ある方に「せっかくこういう土地に引っ越してきたんだから、より鶴岡らしさを味わえる環境、東京とは違う方がいいじゃない」と言われて、確かにと思いました。この家は9DKで大きいんですよ。たぶん集落で一番大きい家なんですよね。合宿所みたいな雰囲気が良くて、昔ながらの家っていう感じだったので決めました。他の家も見たんですけど、正直言うと、「これだったら東京に住んでるのと変わらないじゃん」みたいなところが多かったんです。ここは田んぼの真ん中で、夏は眠れないくらいカエルの大合唱がすごいんです。冬は雪おろしが大変ではありますけど。

(鶴岡市郊外にあるお試し住宅 写真提供:稲川さん)

稲川さん:お試し住宅の期間が過ぎた今もずっと住んでますよ。実は、一年のうち夏場は海外飛び回っていたり、東京で売り込みをしたりしていて、鶴岡には1週間しかいられなかったりします。春夏は外に営業にいって、秋冬は鶴岡がメインで暮らしています。酒蔵さんも大体そうじゃないですか?春夏は外に売りに行って秋冬は造りに入る。人によっては田んぼやるっていいますよね。うちはベンチャー企業なので、売り込みしないとやっぱりなかなか広がっていかないんで、外貨稼いでくるのも僕にとって一つの仕事なんです。

(写真提供:稲川さん)

心のよりどころとなった地域と人との繋がり

稲川さん:家から近いコンビニみやざき(地域のお店)は僕の心のよりどころですよ。毎朝カツサンドと珈琲を買って、そこで会話するのが僕の日課なんです(笑)。あとは、日帰り温泉「ぼんぼ」です。「ぼんぼ」が無くなるかもしれないというとき、僕は相当シリアスに切羽詰まっていました。あの温泉が無くなったら僕の精神状態が崩れるなって。それぐらいお世話になっているので。温泉はいいですよね。近くに住む五十嵐大輔さんが凄く面倒をみてくれることもかなり助かっています。大輔さんの家に行って美味しいもの食べながら酒飲むことと、雪下ろしはもはや楽しみになってくるんですよ。

(冬の積雪 写真提供:稲川さん)

雪国ならではのコミュニケーション

 稲川さん:そうです(笑)。この集落では冬の土日に晴れると、雪おろしするタイミングが皆一緒で、わぁっとみんな屋根に出てくるんですよね。屋根の上コミュニケーションみたいなのがあって(笑)。「稲川さんそこからやると危ないよー」とか言われて。「そうですかー」って(笑)。それでも2回屋根から落ちてしまいました。でも2階の屋根から1階の屋根に落ちたんで、尻もちくらいでした。雪降ろしは2階の屋根と1階の屋根なので、合計面積は凄まじくて、めちゃくちゃ大変ですよ。みんな命綱をつけずに長靴じゃなくてかんじき履いてやっています。僕は長靴でやりましたけど。こんな感じで、僕はこの一年で鶴岡の人より鶴岡の人らしくなったんです。

都会にはない周りがサポートしてくれる仕組みがここにはある。

稲川さん:鶴岡にきて、WAKAZEのメンバーに「うまくいっているのは鶴岡に会社を移したことだ」って言われるんです。僕が鶴岡にきて会社がようやっと立ち上がった感じがするし、1年目どうしようか悩んでいた部分がかなり大きかったので、東京にいたら、たぶんらちがあかなかったと思います。鶴岡には、周りにサポートしてもらえる仕組みがあったなと思っています。それは行政的な補助金的な部分もそうだし、起業支援もたくさんありました。鶴岡市のビジジネスプランコンテストで優勝できたのもすごく大きな契機になりました。また、借り入れの部分で地方銀行さんはサポートが厚いと感じます。東京では、ベンチャー企業なんて相手にされないんですよ。よほどのスーパーベンチャーでない限り、一生相手にされないですよ。僕は気軽な気持ちで起業したわけじゃないですけど、やっていることはどちらかというと誰にでもできる事。他とは全然違って、超コア技術を持っている訳でもない。起業に対するハードルってもっと低くていいし、自己実現ができたらいいと思っているわけです。ですから、最初の資金ぐりのサポートが受けられたり、補助金があったり、地元のメディアにしっかりと取り上げてもらえたり、そういう立ち上げの時の後ろからサポートしてくれる仕組みは、本当に有難いと感じています。ベンチャー企業って最初立ち上がる時に、既存の企業と違って、うちみたいに新しいモデルっていうか、世の中に新しい仕事を作り出そうとしている人たちにとって、世の中に新しい価値を送り込むってすごく最初パワーがいるんです。

(鶴岡市ビジネスプランコンテスト受賞 写真提供:稲川さん)

稲川さん:競合が少ないっていうのもあると思います。ここの地域においては競合が激しくないので、その分言い方悪いですけど目立てるというか、いろんな人に知ってもらえるっていうのはありますよね。東京だったらメディア一つとっても、残念ながら大手のメディアさんに行っても相手にされないですからね。早くグラフ出してこいみたいな。わかりやすい面白さ。スピード感があってぽんぽんぽんと売り上げが上がって、その理由はこうこうこうなのね、わかりやすい、って読める方が楽しいんですよ。でもそういう資本主義的な流れには乗らない、文化的な仕事を僕らはしてるわけなんで、我々にとっては、いろんな人がサポートしてくれて、劇的にお金が儲かる仕事ではないけれど、社会的に意義があることをやりたいと思っていたら、こういう場所でやった方がいいなと思います。だからそういう人には鶴岡に移住する事をぜひお勧めしたい。あとはサイエンスパークがあるので、横のつながりでいろんな経営者から刺激を受けられるので、すごくいいなぁと思いました。ただ、サイエンスパーク以外でもっとベンチャーが増えないとだめだと僕は思ってます。なるべくビジネスプランコンテストなどで、いろんな支援をしていきたいなと思っています。そういう人たちが出てくるための。ライバルが増えて欲しいと思います。

(海外進出へ 写真提供:稲川さん)

日本酒の新しい市場を作り、いずれは海外で自社の蔵をもちたい。

稲川さん:そうですね、まず海外売り上げをしっかり伸ばして外貨を稼げるようになること。僕らは既存の酒蔵さんが売っているところでパイを取ってくるべきじゃないと思っていて、ベンチャー企業なので、新しいマーケットを作らなきゃいけないと思っています。マーケットで、東京ないし海外から外貨を稼いでくる。僕らにとったらある意味東京も外貨に近いわけですよね。県外という意味で。そういうところにもっと焦点をあてて、結果を残していきたいと思っています。

(海外での営業 写真提供:稲川さん)

稲川さん:それがしっかり安定してきたら、次のステップとして、海外で自社の蔵を持ちたいということと、もう一つは直営店を出して、2020年の東京オリンピック以降に向けてしっかりPRできる場所を持ちたい。そこで鶴岡も庄内として、今年庄内オードヴィーさんに作ってもらう予定なんですけど、庄内全体をしっかりPRしていきたいなと思っています。もっと人が来るようになったらいいなと思っています。ボルドーじゃないですけど、ボルドーってお酒を起点にしていろんな人たちが来る町じゃないですか。ワイナリーをめぐりに来るわけじゃないですか。庄内もそういう町になったらいいなって思っています。僕らだけでできることでは全くないんですけど、ただきっかけの一つとして、僕らをきっかけに庄内のことを知ってもらって、来たいと思える人が増えたらいいなと思っています。

 ここ鶴岡で起業の仲間、ライバルをもっと増やしたい。

稲川さん:鶴岡市は結構いろいろ整っていると思います。お試し住宅があり、すごい良かったなって思います。ものづくり補助金とか創業サポート補助金とか、山形若者チャレとか、仕事だけじゃなくて移住に関してプライベートな面でも補助金があったりとかしてすごく手厚いなぁと思いました。手を挙げる人に対しては比較的すっと手が差し伸べられているような環境にあるなと思いました。やりたいっていう意志をはっきり表示しておけば、いろいろなところでサポートが受けられるっていう感じはしました。

(WAKAZEのメンバーと 写真提供:稲川さん)

稲川さん:補助金に頼りすぎるのもあんまり良くないですけど、立ち上がりの時って結構つらいじゃないですか。あればあるほど助かりますよ。起業に対する敷居がもっと下がればいいなって思います。不安がっている人の背中をどんどん押すだけでもしょうがないと思うし、どちらかというと、やりたいと思う人が強い意志を持って、そこにサポートが付いてくるっていう、主従の関係が逆だとだめだと思うんですよね。よくありがちなのが、サポートの方だけ頑張っていて、どんどん行けって言っているのに全然前に進まない、みたいな。じゃなくて、やりたいって人が居たうえで、そこに対してサポートがあるっていうのがあるべき姿だと思うので。やりたいっていう人が増えることが先かなぁと思います。その意味では、やりたいと思った瞬間にそれを周りに発信したり、仲間を巻き込んだりとか、そういうことができるといいなぁと思うし、そういった意味で鶴岡信用金庫さんがやっている経営者塾っていうのは僕今月講師やるんですけど、そういうのがあったりとか。あとは池田さんが立ち上げたインキュベーション施設のような場所があったりとか、ビジネスプランコンテストがあったりとか。どんどんそういう仕組みができてきているんで、そういう仕組みをもっと増やしていくべきかなぁと思います。早くライバルが増えてほしいですね。

インタビュー前編はこちらから・・

(平成29年9月19日 インタビュー)

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