今回のインタビューは、2015年に東京からUターンし、現在NPO法人自然体験温海コーディネットの事務局長を務める冨樫繁朋さん(39歳)にお話しを伺いました。
前編はこちらから・・
外にでてみて認識するふるさとの良さは子どものときの体験に培われるもの。もっと子どもたちに地域の自然や文化を体験させたい。
冨樫さんの想いは現在のお仕事にそのままつながっています。
冨樫さん―子どもたちに自然や文化体験をさせたいし、そういう教育をすべきなんだと思います。だから今度、NPO法人が企画協力して温海リーダー研修会というのを小学校5、6年生の人たちにやるんです。自分のふるさとにどんないいものがあるかっていうのを出させて、それで全く知らない人に、「じゃあ、温海を紹介してください」というのをやりたいと。
(写真提供 冨樫さん)
以前の日本には「ふるさとを守る」っていう使命感に満ち溢れていました。それは、教えられるものではなく、自然とそうしなきゃいけないみたいなものが受け継がれていくものだと思っています。でも戦後に東京一極集中が始まって、田舎はダサいものという風潮が蔓延し始め、モノカルチャーが始まってしまった。僕らはちょうどその世代にいたと思うんです。だからキラキラに見える東京に憧れた。でも時代は変わってきて、ローカルにもいいものがあって、そこを見直すような時代になってきていると思います。子どもの頃に自然・文化体験をすることで、自分の生まれ育ったところは自分たちで守るんだ、守って次の世代につなげなきゃいけないんだという使命感が自然と芽生えてくるはずです。
(写真提供:冨樫さん)
これからどのようにしていきたいですか?
冨樫さん―今やっている仕事はNPO法人なのですが、理念はそのままに営利的で自由度が高い会社を作りたいと思っています。この仕事をしていると、非営利のNPO法人ではできないけど、やったほうがいい企画や仕事がたくさん見えてきます。でも、NPO法人だと色んな関係があってフットワークが鈍いときがあるので、迅速に判断し行動できる会社を作りたいです。そして、地域貢献したいという人材を雇えるような状況にして、地域のために活躍できる人たちを育成していきたいです。
(写真提供 冨樫さん)
一つの仕事ではなく求められるものを組み合わせてナリワイとする新しい働き方
冨樫さん―今これが出来たらいいなと思っているのが、Wワークです。NPO法人の仕事だけだと、直近の東京に居た時の年収の3分の1くらいで結構つらいんです。「鶴岡ナリワイプロジェクト」のように、地域に必要な仕事を組み合わせていったら、ある程度の収入にるなと思うんですよ。今やっている個人事業は、何でも屋で、地域協議会の事務局とか、前述の庄内のものを、前職のつながりでたまに売るとか。温海さくらマラソンのWebサイトを作ったり。隙間の時間でやっても、ある程度の収入として入ってくるわけです。そういうのを重ねていけたら、もっとできるんだろうなと、可能性はあるなとは思います。
(写真提供 冨樫さん)
冨樫さん―NPO法人の仕事をしていると、いろんなところからお声がかかってもきます。この仕事を通して新たなビジネスを生むことって、たぶんできるんだろうなって思うんですよ。だから私は新たにつくる会社で仕組みを構築して、このNPO法人の仕事は一刻も早く退いて、皆にやらせたいんですよね。それでその中で見えてきたものでプロジェクトを走らせたり、起業してもらえたら一番いいなとは思うんですけど。
冨樫さん―温海地域でいったら5人ぐらいが地域の活性に携わるような仕事を出来たらすごくいいなと思います。そのために一番大きいのは人件費だと思うのですが、それを稼ぐだけの売上を出していかなくてはいけないなと思います。
(写真提供 冨樫さん)
冨樫さん― ただ、今の生活には全然満足していません。帰ってきたときって描くじゃないですか、イメージを。そこにはまだまだ程遠い感じです。仕事がもっと速い速度でできると思っていたら、時間がかかる。結局NPO法人の仕事も16時で終われると言っておきながら今の規模にするまで、相当な時間を費やしているんですよね。土日も体験が入るので、やりこなす。東京にいたころより休みがない状況です。さらにどんどん企画を打ってやっていくには、かなりの労力がかかります。ゼロから1をつくっているので、しょうがない部分はありますが、もっと効率的にやらないとと思っています。
(写真提供 冨樫さん)
Uターンして暮らしていくうちに今度は受入れ側となった冨樫さんが感じるのは、移住といっても、誰もかれもが来てもらっていいという訳ではないということだとか。
冨樫さん― 私たちに必要なのは、今の地域に入ってきて、地域をよくする方向に導いてくれるような人たちです。そして、その人が与える影響力は人口の多い都会より田舎の方がより大きくなります。「関係人口をつくる」(※1)にもありましたが、温海は人口約7,500人(※2)しかいないので、一人の力で与える影響力、つまり7500分の1は、都会の人口を分母にしたそれより大きいっていうのはすごく感じます。つまり都会にいるより、ここにいた方が同じ力量で、何かをしたときにまわりからも「こういうのやってたね」とかすぐ言われ、影響力が目に見えてわかるところは、都会にはない感覚です。だからこそ、Uターンや移住をする人たちには、地域の有力者と一緒に引っ張っていってほしいと思います。今の地域には地元にある力と新たな力の化学反応による発展が必要です。
(※1)関係人口をつくる 田中輝美(木楽舎)
(※2)鶴岡市住民基本台長人口より ※H30年3月末時点
コメント